第149話 リハーサル『マノン』すみれ・ラクロワ
すみれとラクロワは『グラン・パ・クラシック』『眠れる森の美女』『マノン』を踊る。すみれの踊る三作品は圧巻だ。
◇
クラシックバレエの最高難度のテクニックで魅せる『グラン・パ・クラシック』を踊るすみれはまさに女王の貫録という感じだ。
美しく繊細な表現。完璧なポジション。非の打ちどころがない踊り。
一緒に踊るラクロワも、この高度なテクニックを必要とされる踊りを完璧に踊り切る。
◇
続いて、古典バレエの名作『眠れる森の美女』豪華絢爛な雰囲気を湛えたチャイコフスキーの曲が稽古場を包む。すみれが踊るオーロラ姫は気品と優雅さ、あらゆる細やかな動きをすべて美しく表現する。
パートナーのラクロワが演じるデジレ王子も気品が溢れる。男性ヴァリエーションとしては最高レベルの技術と表現力を必要とするヴァリエーションだが余裕を感じさせる踊りを見せる。
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そして、この二人が踊る『マノン』が圧巻だ。
この作品は地方で上演されることが少なく
すみれとラクロワの表現力の奥深さに心を奪われる。なんと詩的、劇的な作品なのだろう音楽にも魅了される。
フランス貴族アベ・プレヴォーの小説『マノン』を基にしたバレエ作品。曲はジュール・マネス。
今回、すみれとラクロワは有名な『寝室のパ・ド・ドゥ』と呼ばれる場面を演じる。
書き物をしている青年デ・グリュー。ベッドに寝ていたマノンが後ろから歩み寄る。そして、デ・グリューが手に持っている白い羽根ペンを取り上げて投げてしまう。
そこから、二人が愛を語り合う場面がドラマチックに演じられる。高度なリフト、踊りというより演技の要素が強い表現。
「素敵」
思わず自然に口から出た言葉にハッとする園香。隣にいた
真美も見入っている。
愛を語り合った二人。部屋を立ち去ろうとするデ・グリューをマノンが一瞬引き止め、何か忘れてない? という仕草をする。デ・グリューはマノンと口づけを交わして去って行く。マノンは一人ベッドに飛び込むように寝て音楽が終わる。
◇
見学していた花村バレエの全員が大きな拍手を送る。海外のバレエ教師たちも「素晴らしい」と褒め称える。小さな
踊り終わり、すみれが全員に一礼して見学席に戻ってくる。唯の頭を撫で微笑む。唯がすみれにすり寄っていく。すみれが優しく抱き上げると嬉しそうにする唯。
唯と一緒にキッズクラスを受けていた佐和の妹の真由も、恐る恐るすみれに近づいて行く。すると、すみれは真由に優しく微笑みかけ、頭を撫で肩を抱く。真由も嬉しそうにする。
そんな、すみれの姿を見て、バレエ教師の北村と秋山も、鬼のような人というのは、ただの噂と言った園香の言葉が理解できた。
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