第148話 リハーサル 美織・優一

 園香そのかと真美は瑞希みずきと一緒にバレエフェスティバル出演ダンサーの手伝いをする。出演ダンサーというのは、ここ青山青葉あおやまあおばバレエ団・バレエ学校の稽古場で調整しているダンサーたちだ。美織みおりと優一のペア、すみれとラクロワのペア、古都こととロレンスのペア、それにルエルとディディエのペアの四組がここで練習している。

 世界最高峰のバレエの祭典。たくさんのダンサーが出演する。その中で、出演者のうちの四組が一堂に会してリハーサルする場に立ち会えることなどなかなかない。


 その日は稽古場で最後の調整ということで、その日、稽古場に来ていた花村バレエの生徒は特別に見学させてくれることになった。

 いつものようにゆいと唯のお母さんがいる。バレエ教師の北村と秋山。千春や大人バレエクラスの数人。由奈ゆな、佐和と妹たち、男子三人。そしてそれぞれのお母さんたち。


 バレエフェスティバルに出演するダンサーたちはバレエ団の三階で練習する。ストレッチ、バーレッスンを終わらせ、それぞれ自分たちの演目の練習をする。見学の生徒たちは踊りのリハーサルから見させてもらう。

 稽古場には青葉あおば、真理子、あやめ、とおるげん恵人けいと、それにテレビやバレエの専門雑誌で見たことのある外国人のバレエ教師が四人ほど来ている。オペラ座とロイヤルバレエのバレエ教師だ。

◇◇◇◇◇◇

 美織と優一が『海賊』『ライモンダ』『エスメラルダ』『くるみ割り人形』のグラン・パ・ド・ドゥを踊る。園香たちは、この二人の踊りはもう何度も見ている。高度な技術と安定した踊りには何度見ても驚かされる。そして、この四曲を立て続けに踊る体力も見ている者たちを驚愕させる。

 二人の踊りに対し周りにいるバレエ教師や出演者たちも、特にアドバイスをすることもなく、皆「素晴らしい」と称えるばかりだった。

 唯はにこにこしながら美織に拍手を送る。美織が唯に微笑むと唯も嬉しそうにする。

 佐和が羨望の眼差しで美織を見つめる。

 佐和の真剣な様子に気付いた園香が微笑みながら「すごかったね」というと、佐和が「ファンなんです」という。

 園香が思い出したように言う。

「そういえば、佐和ちゃん、今回こっちで美織さんに会うのが初めてだったんだよね」

「はい」

「美織さんと優一さんは、これからずっと花村バレエに来てくれるんだよ。よかったね」

「そうみたいですね」

 嬉しさを隠しきれないという感じの佐和の純粋さに園香も嬉しくなってくる。


◇◇◇◇◇◇


 美織と優一のリハーサルが終わり、久宝くぼうすみれとマニュエル・ラクロワのリハーサルが始まる。

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