第11章 バレエフェスティバル

第147話 青山青葉バレエ学校で

 バレエ団の『白鳥に湖』の公演が終わって数日が過ぎた。この週にはバレエフェスティバルがある。美織みおりと優一は準備万端という感じだ。すみれも調整できているようだ。今回、一番過酷な状況になっているのは古都ことだ。二週続いて大きな舞台がある。舞台が二週続くという点においては、すみれも同じだが古都ことは『白鳥の湖』で主役を踊っている。しかし、当の古都こと自身は海外のバレエ団で過密なスケジュールをこなしていたようで何の問題もない感じで調整している。


◇◇◇◇◇◇


 花村バレエの生徒で、こっちに来てそのままバレエフェスティバルまで見ていく生徒たちの何人かは、青山青葉あおやまあおばバレエ学校のレッスンに体験レッスンという形で参加させてもらった。


 佐和、佐和の妹理央りお由奈ゆなは、小学校高学年から中学生のバレエ学校の生徒たちと同じクラスのレッスンに参加させてもらった。

 青山青葉あおやまおあばバレエ学校の生徒たちとも打ち解け楽しくレッスンを受けている。さすがに、この年齢の子たちとなると上手な子はかなりレベルが高い。しかし、佐和や理央りお由奈ゆなはまったく見劣りしない程、きちんと踊れている。

 バレエ教師の松野静香まつのしずかも三人に対して他のバレエ学校の生徒と同じ目線で指導する。


 ゆいはキッズクラスで友達がたくさんできて楽しそうにレッスンを受けている。この週は佐和の妹の真由も同じクラスのレッスンを受けるようになった。真由もバレエ教師の佐由美や麗子に名前を覚えてもらいレッスンを楽しんでいる。

 時々、唯に対して「唯ちゃん、これできる?」などと、お姉さん風を吹かす、そんな時、唯は少し困った顔をする。

 バレエ教師の佐由美が「真由ちゃん、唯ちゃんはできていますよ」と微笑みながら言うと、唯も嬉しそうに踊って見せた。


 花村バレエの男子生徒、いつきひかる信也しんやはボーイズクラスに参加させてもらった。小学生や中学生の男子が三十人ほどいる。その中に花村バレエにゲストで来ている月原静つきはらしずかもいた。しずかが皆に紹介してくれて三人はすぐにクラスに溶け込んだ。

 バレエ教師は佐藤和也さとうかずやだ『白鳥の湖』の公演で道化どうけを踊っていたダンサーでいつきたち三人も覚えていた。佐藤はバレエの基本を丁寧に教えてくれるなか、それだけではなく、男子ばかりのレッスンで遊び感覚も取り入れ、できなくてもアクロバティックな技に挑戦させてくれる。そして、できないなりにもコツや、どんな練習をしたらできるようになるか、どこを意識すればよいかを教えてくれた。それは三人にとって貴重な体験だった。

ボーイズクラスはあやめや園香そのか、真美も見学させてもらえた。


 そして、ここにも大人クラスのレッスンがある千春や花村バレエの大人クラスの数人が、このクラスを受けていた。千春は持ち前の人当たりの良さと、誰とでもすぐ仲良くなる性格で、あっという間に青山青葉あおやまあおばバレエの大人クラスのレッスン生みんなと打ち解けた。

 バレエ教師の三島康子みしまやすこはバレエを楽しむことに重点を置いてレッスンを進めていく。基本をきちんと捉えていく。バレエをきちんと学びたいからレッスンに来ているのだ。そして、知っている曲を踊りたいという気持ちを大切にしたい。レッスンの中に有名な曲の振付などを取り入れて楽しくレッスンを進める。

 千春や他の大人クラスのレッスン生もバレエを楽しむことができた。

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