第145話 舞台を終えて楽屋へ(二)

 ルエルたちが微笑みながら通り過ぎて行った。

 花村バレエの生徒たちが集まっているところへ、真理子とあやめとともに古都こと恵人けいとがやって来た。

 千春や大人クラスのものばかりでなく、由奈ゆなや男子たち、そして、松井佐和たちも羨望の眼差しを向ける。


 ついさっきまでの最高レベルの舞台で主役を演じていた二人が目の前にいる。

「今日はありがとうございます」

 古都こと恵人けいとが深々と頭を下げる。


 周りにいるスタッフたちが、ここのバレエ団のプリンシパルたちと気軽に挨拶したり話をしているこの人たちは誰なんだろう、と不思議そうな目で見る。そればかりか、きっとすごい人たちに違いないと思って、通り過ぎるスタッフやバレエ団員が深々と頭を下げ挨拶して通り過ぎる。


 恵人けいと園香そのかのところにやってきた。

「ありがとう。どうだった?」

「いえいえ、どうも何も、凄すぎて」

げんさん、凄かったでしょう」

「うん、なんか、この前、花村バレエに来て下さったときの瑞希みずきさんとのやり取りしか見たことなかったから、なんだか面白い方とばかり思ってたけど、今日のロットバルト、驚きました」

「僕や優一さんが尊敬するのわかったでしょ」

 園香は大きく頷く。

 花村バレエの男子たちも改めてげんの凄さをの当たりにして羨望の眼差しで彼を見る。げんについては瑞希みずきにからかわれているイメージしかなかっただけに、この舞台で見せたロットバルトの印象は、誰の心にも深く刻み込まれるほど凄まじいものだった。

 瑞希が元に微笑みながら話しかける。

「元さん、唯ちゃんには怖がられてるけど、男子たちには憧れられてるじゃん」

「そうかなあ」

 元は男子生徒たちに、

「また、すぐ花村バレエに行くから」

 といって握手をした。

「練習しとけよ」

 と微笑む元に、男子生徒たちは声をそろえて、

「はい」

 と返事をする。元は頷きながら歩いていこうとして、もう一度振り返り、

「ストレッチ、サボるなよ」

 と言って微笑み楽屋の方に歩いて行った。


 恵人が園香に聞く、

「夜公演からは手伝いに来てくれるの?」

「うん」

「そう、ありがとう。まあ、そんなに手伝うことはないと思うよ。スタッフいっぱいいるし。舞台裏見学と思って来てよ」

「うん」

 恵人も夜公演の準備で楽屋に行った。

 北村と秋山は古都こととずっと話をしていた。真理子とあやめが美織みおりとすみれと話をしているのに気が付いた。

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