第143話 バレエ『白鳥の湖』第四幕

バレエ『白鳥の湖』第四幕(森の湖)


オデット 九条古都くじょうこと

ジークフリート 河合恵人かわいけいと

ロットバルト 元泰斗げんやすと


 ゆっくりと幕が上がる。森の湖では白鳥たちがオデットを待っている。白鳥たちはオデットと王子の愛に自分たちの運命を託して待っている。

 抒情的な美しい曲でコールドバレエ(群舞)の白鳥たちが踊る。


 情景(アレグロ・アジタート)曲が一転する。

 悲しみに暮れ湖に戻ってきたオデット。オデットは王子の誓いが破られたことを白鳥たちに告げます。それを聞いた白鳥たちは嘆き悲しみます。


 曲が変り不穏な空気が湖を包むと、白鳥たちを嘲笑うかのように悪魔ロットバルトが登場します。

 しなやかな跳躍。美しくも魔性を秘めたロットバルト。柔らかく繊細な踊り、驚異的な高さの跳躍。げんの表現力と技術の高さに圧倒される。まさに人間ではないものを体現している。

 舞台袖ぶたいそでで見ている優一や美織みおり瑞希みずき、団員、スタッフも一観客になったようにげんの踊りに見入ってしまう。


 その後、湖に駆けつける王子ジークフリート。オデットや白鳥たちに許しを請い、オデットに愛を誓うのですが、もうどうにもならないことをオデットは伝えます。

 オデットは白鳥たちを悪魔ロットバルトの呪いから解き放つことができなかったことを嘆き許しを請います。そして、自責の念に駆られたオデットは湖に身を投げる決心をします。

 止める白鳥たち、王子ジークフリートも止めようとするのですがオデットの決心はかわりません。オデットは最後にジークフリートを許し二人は抱擁します。

 湖に身を投げようとするオデット、止めようとする王子、その最後の時に、再び悪魔ロットバルトが現れます。


 バレエ『白鳥の湖』の終曲。この作品の中で『白鳥の湖』の主題が最も劇的に迫力のある演奏で響き渡る。

 王子とロットバルトの最後の戦いの場面が繰り広げられます。しかし、悪魔の力は強大で王子は苦戦します。

 オデットは白鳥たちが止めるなか湖に身を投げます。ロットバルトに苦しめられながらも戦う王子。湖に身を投げたオデットに悲しむ王子。王子もオデットへの永遠の愛を誓い。自ら湖に身を投げます。

 すると悪魔ロットバルトがもがき苦しみ始めます。そして最後に悪魔は息絶えてしまいます。

 白鳥たちの見上げる先に天上で永遠の愛を成就させたオデットとジークフリートの姿が現れます。二人の愛の力で悪魔ロットバルトは息絶えたのです。白鳥たちが悪魔の呪いから解き放たれ天上で結ばれたオデットとジークフリートを称えるなか、指揮者の恵那えなが最後の指揮棒を振り切り。舞台の幕が閉じます。


 客席から割れんばかりの拍手と喝采が響き渡りとどまることがないほどだった。

 出演者全員が速やかに舞台に並び、もう一度、幕が開く。

 オデットの古都ことをジークフリートの恵人けいととロットバルトのげんが両脇からエスコートし三人で前に出てルベランス(お辞儀)をする。それに合わせて出演者全員がルベランス(お辞儀)をする。

 その後、オデットの古都ことが何度かルベランス(お辞儀)をした後『白鳥の湖』の第一日目の昼公演は幕を下ろした。

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