第126話 青山青葉バレエ団 ゲネプロ

 園香そのかたちが舞台のそでですみれたちと話していると、楽屋の方から青葉あおばを先頭に青山青葉あおやまあおばバレエ団の団員たちが舞台袖ぶたいそでにやって来た。今回の『白鳥の湖』出演者全員が、それぞれの衣装を身に付けて勢ぞろいしている。


 今日まで何度も、稽古場で見てきたダンサーたちの姿とまったく違う。稽古場でも衣装付きリハーサルを何度も見た。しかし、今、舞台に向かう団員たちは、今まで見たこともない神聖さすら感じる空気をまとっている。


 伝統ある名門バレエ団が放つオーラに園香たちは圧倒された。


 青葉が微笑みながら園香たちに言う。

「ここ素敵な舞台でしょう」

 頷く園香たち。


「いつか一緒にこの舞台に立ちましょうね」

 そういって青葉は園香たちに微笑む。


 目を輝かせて団員たちを見つめるゆい。青葉は唯の頭を撫でながら微笑む。

「唯ちゃんも大きくなったら、いつか、このバレエ団でオデット姫を踊ってね」


 唯は笑顔で手をあげて、

「はーい」

 と微笑む。


 緊張した表情の団員たちに笑顔が広がった。皆が唯に微笑み、頭を撫でて舞台の方に向かって行く。唯は嬉しそうに団員たちを見つめている。


 舞台の上にバレエ団員、バレエ教師たちが集まる。そして、今回の舞台には出演しないがスタッフとして協力する団員たちも集まった。

 オーケストラピットにオーケストラの団員。

 客席にバレエ団の衣装スタッフ、大道具、小道具などの舞台美術スタッフ。舞台照明スタッフ、場内アナウンススタッフから劇場周りで協力してくれるすべての関係者たちが集まった。


 園香たちはこの光景に、改めて、このバレエ団の大きさを感じる。今ここにいる関係者たちだけで、この大きな劇場の一階席が半分くらい埋まってしまいそうだ。


 青葉が出演者、スタッフ全員に挨拶し、伝達事項を伝える。


 ゲネプロ

 出演者、すべてのスタッフが本番を想定して行うリハーサル。


 出演者は舞台上での踊り、演技だけでなく、本番中の舞台の流れ、誰がどの曲を踊っているとき自分はどこで何をしているのか、自分の出番までの時間の感覚。衣装の準備、あらゆることを確認する。

 衣装スタッフも、いつ、何が起こっても対応できるように舞台袖、楽屋周りで控えている。舞台美術スタッフも舞台の転換の時間を最終確認する。小道具に関するハプニングなどにすぐ対応できるように舞台袖で待機する。

 哲也やさとしを含め、今日出演しない団員も舞台袖に付き出演者をサポートする。

 優一と瑞希みずき古都こと恵人けいとそばにいる。美織みおりはすみれに付いて何か話をしている。


 結局、園香たちは客席で観ていていいと言われ、青葉やバレエ教師たちと一緒に客席で観せてもらうことになった。園香と真美、そして、真理子とあやめ、唯と唯のお母さんも青葉たちのすぐ後ろの席で観る。

 さらに、その後ろでは海外のプリンシパル、ルエルやディディエ、ロレンスやラクロワたちが観ている。


 公演前日リハーサル(ゲネプロ)が始まった。


 場内アナウンスが本番通りのアナウンスをする。


 恵那えなの指揮で劇場に『白鳥の湖』の曲が流れ始めた。


――――――

〇ゲネプロ

 本番前、本番前日、舞台で本番通りに行う最終リハーサル。

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