第104話 青山青葉バレエ団 唯と唯ママへの招待状

 美織みおりがキッズクラスの曲を準備する間、ゆいは嬉しそうに美織にくっ付いてくる。


 園香そのかが唯の頭を撫でながら、

「唯ちゃんは美織先生が大好きだね」

と言うと、唯が大きく頷いて、

「大好きよ」

と言う。美織も唯に微笑み返し、やさしく頭を撫でる。

 園香が、

「美織先生が来てくれて、よかったね」

と言うと、もう一度大きく頷く。


 美織が瑞希みずきの方に目を移し確認する。

「明日の午前は第二幕の衣装付きリハーサルだったわね」

「はい、そうです。朝のバーが十時からで、十一時から一階の大教室で第二幕の衣装付きリハです」

 瑞希が応える。

 美織が少し考えるような顔をした後、彼女に指示する。

青葉あおば先生に、明日、唯ちゃんを見学させてあげられるよう話して来てくれないかしら?」

「え、と、二幕ですか?」

「うん、来れたら十時から三階のレッスン、その後、十一時から第二幕」

「はい」

 瑞希が三階に上がって行く。


◇◇◇◇◇◇


「はい、皆さん、レッスンを始めます。よろしくお願いします」

「おねがいします」「おねがいします」

 唯もニコニコしながら大きな声で「おねがいします」と言う。


 唯はついさっきまでとは別人のように元気にレッスンに参加する。指導を担当していた二人のバレエ教師もホッとした。

 周りの子供たちも先程までは、唯にどう接したらいいか分からなかったが、元気を取り戻した唯を見て、みんなが唯に話しかけてくる。

 急に友達がたくさんできて唯も嬉しそうに微笑む。


「唯ちゃん上手」

「唯ちゃん教えて」

などと、みんなから言われ嬉しそうに踊って見せる唯の姿に、見学席にいた、たくさんのお母さんたちからも微笑みがこぼれた。

 園香や真美も嬉しくなった。


◇◇◇◇◇◇


 瑞希が青葉のところに行き下であったこと。そして明日のリハーサルの見学のことをお願いする。青葉は快く受け入れてくれた。

 真理子とあやめにも伝えようとしたが、用があって、今日は一足先に帰ったそうだ。明日はまた二人とも朝から来るらしい。


 キッズクラスの教室に帰ってきた瑞希が、見学が許可されたことを美織に伝える。


◇◇◇◇◇◇


 レッスンが終わり、たくさんのお母さんたちに美織と瑞希が囲まれる。こんな時でないと話しかけれるチャンスはないとばかりに、お礼と一緒に子供と記念撮影をしてもらうお母さんもたくさんいた。

 美織も瑞希も快く応じる。

 なぜか、美織たちと一緒にいた園香と真美も、きっと、この人たちも一緒にいるのだから、バレエ団の凄い人なのだろう、と一緒に記念撮影に入れられた。


 美織が生徒やお母さんたちのとの会話が一段落したタイミングで、唯のお母さんを呼び止めた。

「もし、明日、予定がなかったら、バレエ団のリハーサル見学に来ませんか?」

と話すと喜んで見学したいという。

 唯は見学のことより、また、美織に会えることが嬉しいようで、

「絶対来る」

と笑顔で言う。


 次の朝、九時半にバレエ団の建物の入り口で待ち合わせる約束をした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る