第90話 青山青葉バレエ団 青山青葉バレエ団に向かう
瑞希に案内されて二階に行くと瑞希の母親が迎えてくれた。温厚な感じの優しい女性だ。瑞希から話を聞いていたようで、バレエダンサーとしての
この人が
下のバレエ教室では小学生くらいの子供たちがレッスンを受けている。教えている先生はここのバレエ教室の出身で、瑞希にとっては先輩のバレエダンサーだということだった。
少し話をした後、瑞希の部屋に行く。きれいに整えられたその部屋に、園香はハッとした。その部屋はバレエ雑誌で『バレリーナの部屋』として紹介されていた部屋だった。初めて来るのに見覚えがある。
「この部屋。私バレエ雑誌で見た記憶があります」
「え、ああ、取材に来たの」
そういいながらも、特別変わった部屋でもなくきれいな女の子の部屋という感じで何かバレエの道具が置いてあったりするわけではない。自分の部屋にバレエのレッスンバーがあるような部屋でもない。バレエのものは一階の稽古場に行けば普通にある。瑞希の家はバレエ教室だ。
◇◇◇◇◇◇
午後から
ゲストで花村バレエに来てくれた何人かは面識があるのだが、さすがにバレエの世界にいる人なら誰もが知る名門バレエ団を訪問するのは緊張する。
都内、関東圏に数多くバレエ学校の教室がある。そして、バレエ学校が運営する教室が全国にも数か所ある。それぞれのバレエ教室には、そこで教えているバレエ教師、スタッフもいるが、定期的に青山青葉バレエ団の指導者が出向いて教えている。まさにビッグカンパニーだ。
そして、今から向かうのは、その本拠地ともいうべき青山にあるバレエ団だ。そこにはバレエ界の頂点にいる一人ともいうべき
一ヵ月ほど前、その人から直接指導を受けていたことが、なにか信じられないことの様に思えてくる。
瑞希は相変わらずいつものような格好だ。黒のTシャツに黒のジーンズ。頭には黒地に鮮やかな青で美しい模様が描かれたスカーフを巻きサングラスをかける。そして稽古道具の入った少し大きめのショルダーバッグを肩に掛ける。花村バレエのレッスンに来るときと変わらない。
園香の目から見て、どこか垢抜けていてかっこいいと思うのは変わらないが、東京に来て、電車の中や駅、街中でいろいろな人を見るが、その風貌は、それほど園香の地元の人と変わらない。
そんな中、電車の中でも、街中でも、あまり瑞希のような格好の人は見かけない。
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