第9章 東京 青山青葉バレエ団
第89話 青山青葉バレエ団 東京・瑞希の家
一足先に
園香は東京には何度か来たことがあり、
とりあえず、到着して、すぐに瑞希に連絡した。瑞希に言われた電車で下北沢駅まで行く。駅に着いて周辺を見回し、こんなところに実家があるのかと少し驚いた。
そういえば瑞希たち三人がどういう家で育った人たちかということを聞いたことがなかった。瑞希と優一が都内に住んでいたということ。
下北沢駅に着くと瑞希がいつものような恰好で迎えに来てくれていた。カジュアルな格好で、その辺から歩いて来たような感じだ。駅周りの賑やかな場所を通り過ぎる。他愛もない話をしながら少し歩いていく。
先程までの雑踏とは異なり、静かな街並みに大きな家が続く。その風景を見ながら「うちいっぱい泊まるとこあるから」と瑞希が言っていた言葉を思い出す。
豪邸なのだろうか? あまり気にしてなかったが……というより、彼女の性格や、さばさばした喋り方から、そんな感じを受けなかったが、とんでもないお嬢様なのだろうか……だとしたら、
考えてみれば東京で姉弟二人にバレエを習わせ二人とも名門バレエ団のプリンシパルに育てる家庭だ。
小さい頃から大人になるまで、子ども二人にバレエを習わせる家庭。それなりの家庭で両親がバレエに対して理解のある家でなければ、そこまでは続かないだろうと思えた。そういえば、ほかに兄弟がいるのかどうかも聞いてなかった。
どちらにしても、瑞希も恵人もまったく付き合いづらさのような、いやな感じや自分と異質なものを感じたことはない。
駅からそう遠くない通りの向こうから心地よいピアノの音が聞こえてくる。なんて閑静で優雅なところなんだろう。街並みを見ながら、そんなことを考えて歩いていた。
「ここだよ」
瑞希が美しく大きな門を入っていく。入り口に美しく描かれた文字に呆然とする園香。
え? 実家がバレエ教室なの?
門を入るとレッスンを受けている子供たちの姿が見える。
「瑞希さんちって、バレエ教室だったんですか?」
「そうだよ。言ってなかったっけ」
「き、聞いてないですよ」
「おどろいた?」
頷く園香に、微笑みながら、
「いっぱい泊まるとこあるでしょ。稽古場で寝れるから」
「え……」
「うそうそ」
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