第88話 バレエフェスティバル リハーサルを終えて

 リハーサルを終えて美織みおりと優一が見に来てくれた人全員に挨拶をした。他の教室の先生たちも、皆、美織と優一のところへやって来た。どの先生からも時間に余裕ができたら、うちの教室で一度レッスンをして欲しいと頼まれた。

 大勢の生徒たちも懇願するような目で二人を見る。真理子の方に視線を向ける二人に真理子も笑顔で頷いて返す。

 それぞれの先生に改めて挨拶し快い返事をする優一と美織。

 今回のバレエフェスティバルが終わったら、それぞれの教室に一度挨拶に行くという約束を取り付けた。

 美織と優一はしばらくそれぞれのバレエ教室の先生方や生徒たちと話をしていた。


◇◇◇◇◇◇


 美織と優一の衣装を片付ける瑞希みずき

「ごめん、園香そのかちゃん手伝って」

 園香が瑞希の所に行くと真美も付いて来て一緒に片付けを手伝ってくれた。

「ねえ、二人はいつから東京に行くの?」

「あ、私は週末に東京へ行こうと思います」園香が応える。

「私もこの週末には東京に行きます」真美が応える。

「そう、二人は一緒に来るの?」

「いえ、私たち別行動なんです。話してたら、たまたま同じときに東京へ行くってことがわかって……真美は友達に会ったりするんだよね」

頷く真美。


「私は青山青葉あおやまあおばバレエ団の公演も観て、それからバレエフェスティバル観に行こうと思うんで、瑞希さんや美織さんはどうされるんですか?」

「うん、私たちは三人とも明後日、東京に向かうの。園香ちゃん、うちに泊まりに来るんだよね。連絡先教えてあったよね」

「は、はい、ありがとうございます」

「え、園ちゃん瑞希さんちに泊めてもらうん?」

「まあ」

「ええなあ」

「真美ちゃんもうち来る?」

 瑞希の言葉に、園香が、

「真美ちゃん、友達の家に泊まるんでしょ」

「まあ、全部じゃないよ。ホテルも予約してんねん」

「じゃあキャンセルしてうちに来なよ?」

「え! いいんですか?」

 真美が喜ぶ。

「いいよ、いいよ、うちいっぱい泊まるとこあるから」

「え? 瑞希さんの実家って旅館かなにかですか?」

「ええ? いやいや、まあ、来たらわかるよ」

「?」

 不思議な表情で顔を見合わせる園香と真美。

 園香は心のどこかで恵人けいとの家に泊まれるという喜びもあったが、一人で泊まるのは瑞希や恵人の家族の手前、間が持たない気もしていた。


「そうそう、園香ちゃん、青山青葉のレッスンにも参加するんでしょう。稽古できるようにレオタードとかシューズとか持ってきなよ。トゥシューズもね。もしかしたら向こうでいろいろ見てもらえるかもしれないから……」

「は、はい」

「真美ちゃんも持ってきときなよ」

「え? 私も受けられるんですか?」

「うん、大丈夫だと思うよ。たぶん、どのレッスンでも受けさせてもらえるよ。私とか美織さんの知り合いっていうこともあるし、青葉あおば先生やとおるさんも園ちゃんのレベルわかってるから、ああ、真美ちゃんも、たぶん、いろいろな人があなたのこと知ってると思うし」

 瑞希が微笑んで言う。

「え、そうなんですか?」

 真美が少し気まずそうに言う。


「みんなでまた向こうで会えるね」


◇◇◇◇◇◇


鹿島かしまさん、鹿島真美かしままみさん」

 北村が真美を呼ぶ。

「入会手続されますか?」

「あ、はい」

 真美は北村のところで入会手続きを済ませた。

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