第61話 くるみ割り人形 第二幕(六)花のワルツ(三)
第二幕
花のワルツ
出演者・全員
曲に合わせて踊り始める。ワルツ組が優雅に踊る。一回目の曲の盛り上がりは宮廷舞踊の雰囲気を思わせる気品あふれる踊り。ゆったりとした踊りは、踊りというより貴族的な所作を動きに投影したような美しさ。
二回目の曲の盛り上がりで
おそらく本番もこの組み合わせでいくという。
女性六人のうち、
チェロとヴィオラの音で六人が踊り、次のホルンの音で舞台上にいるワルツ全員が合流すると十八人の踊りになる。男女のペア八組の十六名、プラス
この部分で少し隊列が乱れる部分があった。まだ花村バレエの男性二名が十八名の踊りの中でのサポートや流れに戸惑っている。少しヒヤッとするところもあったが、なんとか事なきを得る。
次にディベルティスマンのダンサーが入る。少しぶつかるところや動きが止まるところがあった。そして、ディベルティスマンの十三人とワルツの十八人が合流すると三十人近くになる。この大人数の中で誰かの動きが止まるのは危険だ。
その後、さらにそこへ
キャンディの子供たちが入って来たとき、花村バレエの大人クラスの男性の動きが止まった。
それにぶつかりそうになったワルツ組の女子高生がよけた瞬間、女子高生とキャンディの女の子がぶつかりキャンディの女の子が尻もちをつくように転んだ。
「止めて!」
「大丈夫?」
女の子はニコニコしながら
「大丈夫。ぶつかっちゃった」
という。
「痛くない?」
頷く女の子。
どうやら、どこも痛くないようだ。怪我もしてない様子だ。まだ、振りが通ったばかりだ仕方がないことかもしれないがキャンディの子が心配だ。
由香が
ぶつかった女子高生と大人クラスの男性が謝りに来た。真理子と
女の子のお母さんらしい女性が心配そうにこっちを見ている。周りのお母さんたちも心配そうな表情だ。
今、転んだのはこの女の子だが、誰がぶつかってもおかしくない構成だ。
真理子と
女の子はニコニコしながら、
「大丈夫だよ」
という。お母さんも真理子たちに頭を下げる。女の子の頭を撫でる。女の子は笑顔で踊りの列に戻った。
もう一度、真理子がお母さんに頭を下げ全員列に戻る。
真理子が指示を出し、全体の動きを確認するように注意する。
「今は細かい振りはいいから全員の動きを全員が覚えて! 自分の動きだけじゃなくて誰がどう動いているか確認してください」
もう一度全員で一つ一つ動きを確認する。先程の大人クラスの男性も「もう大丈夫です」という。
男性と女子高生も、もう一度動きを確認する。そこにキャンディの子も入り三人でもう一度流れを確認する。同じところを他のダンサーもぶつからないか確認する。近づいたとき、すれ違うとき、それぞれのダンサーが目配せしてお互いを意識しながら踊る。
「もう一回、曲でお願いします」
真理子が頷く。
「周りを気にして、一緒に踊る仲間を意識して、気遣いながら踊ってくださいね」
真理子が曲をかける。
全員の集中力が今までにないほど高いのがわかる。踊っているダンサーたちも他の仲間一人一人の集中力が今まで以上に高くなっているのを感じる。
今度は誰もぶつかりそうになることなく全員が最後まで踊り切った。まだまだ、振りは間違える者も多かったが全員無事に踊り終えた。
「はい、今日のところはこんなことでいいでしょう」
真理子が微笑んでみんなに言った。全員、緊張が解けてその場に座りこんだ。さっきの女の子も笑顔で友達と話をしている。
ここで一旦休憩に入る。
休憩の後は、
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