第56話 くるみ割り人形 第二幕(一)美織の衣装

ディベルティスマン

 余興などを意味する言葉。バレエ『くるみ割り人形』の中では第二幕の『お菓子の国』の踊りが『ディベルティスマン』と呼ばれる。

 ここまでの『くるみ割り人形』のストーリーと直接関係なく一曲一曲がクララを迎えるお菓子の国の妖精たちの踊りである。一つ一つの踊りが本編の物語と関連する心情を表したり、本編と関連するストーリー性を持たないものだ。


 他の作品でもバレエ『眠れる森の美女』の第三幕。

 オーロラ姫とデジレ王子の結婚式に祝福に来る『赤ずきんとおおかみ』『青い鳥とフロリナ姫』『シンデレラ姫とフォーチュン王子』などの踊りが『ディベルティスマン』と呼ばれる。


◇◇◇◇◇◇


『くるみ割り人形』第二幕 ディベルティスマン

〇チョコレート(スペインの踊り)

〇コーヒー(アラビアの踊り)

〇お茶(中国の踊り)

〇トレパック(ロシアの踊り)

〇あし笛の踊り(フランスの踊り)

〇キャンディボンボンとジゴーニュおばさん

〇花のワルツ(デコレーションケーキ)


〇金平糖の精(クララ)と王子の踊り(グラン・パ・ド・ドゥ)


 この第二幕の演出、最後のグラン・パ・ド・ドゥは演出は作品によって様々である。


 クララがくるみ割り人形に『お菓子の国』へ招待してもらう演出では、クララはお客さんとして『お菓子の国』の妖精たちに迎えられいろいろな踊りを見せてもらう。

そして、最後にお菓子の国の王女『金平糖の精』と王子『コクリューシ王子』の踊りで歓迎されるという演出。


 今回の花村バレエの『くるみ割り人形』は魔法が解けた王子がクララを『お菓子の国』に案内してくれるという演出。

そして『お菓子の国』に迎えられたクララが『金平糖の精』として王子と一緒に踊るというものである。


◇◇◇◇◇◇


 とおる古都ことが『花のワルツ』の振り付け、段取りを出演者、スタッフに説明する。

 真理子を始め、花村バレエのスタッフばかりでなく、指揮者の恵那えな彩弥さや。衣装の由香も真剣な表情で説明を聞く。

 この踊りは園香そのか恵人けいとの他、ディベルティスマンで踊った全員、キャンディボンボンを踊る小さな子供たちも最後に舞台に出てくるという演出。


 第二幕のチョコレート(スペイン)、コーヒー(アラビア)、お茶(中国)の他、キャンディのキッズも、その踊りの衣装のまま『花のワルツ』に出演する。

 園香そのか恵人けいともその後のグラン・パ・ド・ドゥの金平糖の精、王子の衣装で登場する。

 しかし『花のワルツ』の主要な踊りを踊る美織みおりは『キャンディ』のジゴーニュおばさんの衣装から『花のワルツ』の衣装に着替える。


 一つ前の踊り『キャンディボンボン』にキッズの子供たちと美織みおりが出演する。

『キャンデイ』は小さい子たちばかりなので、最後のお辞儀から、全員が舞台の袖にハケるまで美織みおりが付いていることになる。

 つまり一つ前の曲で美織みおりは最後の最後まで舞台に残ることになる。

 そして『花のワルツ』につながる。

 第二部の出番が『花のワルツ』だけの人は花のワルツの薄いピンクのロマンティック・チュチュで踊る。

 美織みおりはジゴーニュおばさんとして『キャンディ』に出るが『花のワルツ』はロマンティック・チュチュの衣装で踊ってもらうととおるが言った。


『花のワルツ』では、おそらく美織みおりは早い段階で舞台に登場する。早ければ二回目の曲の盛り上がりで登場することになる。曲が始まって約二分三十秒。


 それが美織みおりの衣装替えの時間だ。


――――――

〇ロマンティック・チュチュ

 バレリーナの衣装として有名なチュチュ。ウェディングドレスのようにふわっとした形のスカートのチュチュをロマンティックチュチュという。チュール素材で作られたスカートで裾丈すそたけひざくるぶしの間くらいで優雅な踊りを表現する。

『ジゼル』『ラ・シルフィード』『レ・シルフィード』などの衣装として使われる。


――――――

〇クラシック・チュチュ

 スカートが横に丸く広がったチュチュ。バレリーナの足を使ったテクニックを美しく見せるため、また踊りやすくすることを可能にした衣装。グラン・フェッテなど高度なテクニックを美しく見せることができる。

『くるみ割り人形』『白鳥の湖』や『眠れる森の美女』の主役の衣装はクラシック・チュチュである。なかでも『白鳥の湖』の白鳥は全員、白のクラシック・チュチュで踊る。

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