第51話 くるみ割り人形 第一幕(十一)通し練習(一)


 序曲から通し練習。踊りのない部分はとおるがその場面の説明を添えていく。瑞希みずきがデッキの再生ボタンを押す。

 曲が流れ始めると瑞希も踊りの準備を始める。曲は流しっ放し。ノンストップで第一幕を通す。

 徹もシュタールバウムとして出演するが、随所に説明を入れながら、出演者たちが本番の舞台をイメージできるようにする。


◇◇◇◇◇◇


〇序曲

 今回の舞台演出では、この曲の最初の方で緞帳どんちょう(舞台の一番客席側の大きな幕)を開ける。その後ろに街の通りの風景を描いた幕を下ろした状態にする。幕の上部をスクリーンにして第一幕のあらすじを映し出す。

 幕の下の方ではドロッセルマイヤーが子供たちに渡すクリスマスプレゼントを選んでいる姿を映し出す。

 そして、くるみ割り人形を選び、満足そうに袋に入れる姿を映し出したところで暗転あんてんする。


 その後、曲が変わる。


〇第一幕 第一場

〇クリスマスパーティーに向かう客人たち

 雪の舞うクリスマス・イヴ。

たくさんの家族がシュタールバウムの屋敷で開かれるクリスマスパーティーに招かれていました。雪の降る通りを楽しそうに歩いて行きます。

そして客人の最後にシュタールバウム家とゆかりの深いドロッセルマイヤー(久宝優一くぼうゆういち)がやって来ました。

 屋敷に入る前にマントからプレゼントの一つ『くるみ割り人形』をスッと取り出す。何かを思わせるような仕草をした後、マントをひるがえして屋敷に入っていきました。


 幕が変わり一転して明るい屋敷の中の大広間。華やかに飾り付けられたクリスマスパーティーの会場。中央後ろにはクリスマスツリーがあります。

 シュタールバウム(青葉徹あおばとおる)と、その奥様(花村はなむらあやめ)が次々やってくる客人たちに挨拶をする。子供たちはみんな楽しそうに遊んでいます。


 シュタールバウムの挨拶でクリスマスパーティーが始まります。


〇行進曲

 この作品の中でも有名な曲の一つ。

パーティーに招かれた子供たちが曲に合わせて一斉に踊り始め、大人たちは楽しそうにそれを見ています。子供たちの中にシュタールバウム家のクララ(浅香由奈あさかゆな)と兄のフリッツ(美川信也みかわしんや)もいます。


〇子供たちのギャロップと大人たちの踊り

 シュタールバウム(とおる)が客人たちに促すように奥様(あやめ)と踊り始めると、客人の大人たちも皆楽しく踊り始めます。


〇踊りの情景

 曲が変わりヴィオラの旋律とトロンボーン音色。

 この家にゆかりがありフリッツ(信也)とクララ(由奈)の名付け親でもあるドロッセルマイヤー(優一)が広間の中央に出てきて子供たちを集め手品や人形劇を見せます。

 楽しそうに見る子供たち、その周りで大人たちも子供たちと一緒にドロッセルマイヤー(優一)の出し物を楽しく見ています。


 人形劇のあととっておきの出し物をみんなに見せます。大きな人形が運び込まれてきます。

 道化どうけのような人形ハレルキン(来島樹くるしまいつき)とフランス人形のようなコロンビーヌ(森岡玲子もりおかれいこ)が登場します。


 ドロッセルマイヤー(優一)がステッキを振って魔法をかけるとハレルキン(いつき)が踊り始める。いつきはいつにも増して緊張したが瑞希みずきが教えてくれたことを注意して踊ることができた。

 ふと瑞希の方に目がいく。微笑んで頷く瑞希。見学席のお母さんたちから拍手がくる。


 次にドロッセルマイヤー(優一)がコロンビーヌ(玲子れいこ)にステッキを振る。玲子も美織みおりに教えてもらったところに注意しながら丁寧に踊った。

 最後はハレルキンのいつきと二人で踊る。周りで見ている子供たちや客人が拍手してくれる。

 美織みおりも微笑みながら見てくれていた。周りで見ていたお母さんたちからも拍手がくる。


 その後、大きな箱が運び込まれ不気味な曲とともにムーア人(遠藤光えんどうひかる)の踊りが始まる。ひかるは緊張していた。

 まだまだ古都ことが教えてくれた技術を表現できない。それでも今できる限りの踊りをした。

 周りでおびえるような演技をする小さな子供たち。驚く表情でひかるの踊りを見る客人たち。なんとか踊り切った。子供たちが拍手をしてくれた。客人の大人たちも拍手をくれる。

 古都ことが微笑みながら拍手してくれた。瑞希も美織も周りのお母さんたちも大きな拍手をくれた。


 出し物が終わりドロッセルマイヤー(優一)は子供たちにクリスマスプレゼントを渡す。楽しみにしていた子供たち次々とプレゼントをもらって喜ぶ子どもたち。

 ドロッセルマイヤー(優一)がマントからくるみ割り人形を取り出す。あまりかわいらしくない人形に子供たちは嫌な顔をする。

 その中でクララ(由奈)だけはその人形が欲しいという。男の子たちはその人形をからかい。女の子たちはクララを変わった子だという目で見る。

 兄のフリッツ(信也)がクララ(由奈)をからかい人形を奪おうとします。クララ(由奈)は嫌がります。無理やり奪おうとして引っ張り、人形が壊れてしまいます。

 ドロッセルマイヤーはクララ(由奈)をかわいそうに思い。人形を直してくれるという。


 パーティーが終わり客人たちが家路につきます。フリッツ(信也)とクララ(由奈)も寝室に帰ります。


 しかし、クララ(由奈)は人形のことが気になって眠れません。

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