第48話 爽やかな翌日の朝に
高校を卒業してから大学に入るまでの春休み。奈々と一緒に自動車の免許を取った。結局、春休み中には取れなかったがゴールデンウィークまでには何とか取れた。
練習も兼ねて、時々、買ってもらったばかりの車で稽古場に行ってみる。駐車場に停めるのはまだ慣れてない。慣れてはいないが
稽古場のみんながひやひやしながら彼女たちが駐車スペースに入ってくるのを見る。二人の車が来ると、飛び出して来て駐車するのを見てくれる。
みんなが誘導してくれるのは親切というより、自分の車に当てられたくないという思いからのような気もする。
大体、飛び出してくるのは隣の車の人だ。
土曜日の朝。慣れない運転で稽古場に向かう園香。町を歩く人々にとっては普通の休日だ。しかし、自分が今向かっているところは普通の人からすれば想像できない世界だろう……ふと、そんなことを思う。
昨日も遅くまで練習があったが、駐車場に着くと、もう由奈のお母さんの車が停まっている。隣の駐車スペースを一つ空けて車を停める。
稽古場に入ると、まだ他の生徒はいない。見学席の椅子で
「おはようございます。昨日はお疲れ様でした」
園香が挨拶すると顔を上げ微笑む。
「おはようございます。園香さんも本当にお疲れ様でした」
園香は彼女に対して、誰に対しても礼儀正しくやさしいお母さんという印象を持っていた。
由奈の父親は市内で内科のクリニックをしていると聞いたことがある。何度か稽古場にも顔を出したことがある。
父親も温厚で物静な感じの人だ。きっとバレエに対して理解のある人なのだろう。
「あ、園香ちゃん、おはよう、早いね」
北村が掃除をしながら園香に話しかけて来た。
「昨日はお疲れ様でした」
「いえいえ、あなたの方がお疲れよ」
そんな会話をしていると更衣室から由奈が出て来た。
「あ、由奈ちゃん。おはよう。今日もよろしくね」
「おはようございます」
微笑む由奈。
この配役が決まるまであまり意識して見ていなかったが、真理子やあやめは彼女の素質を早い時期から見抜いていたのか、小さい頃から目を掛けて見てあげていたような気がした。
「あら、おはよう。由奈ちゃん、園香ちゃん。早いわね。昨日はお疲れ様」
あやめが稽古場に入って来た。
「今日の練習も、また長くなるけど頑張ってね」
「はい」「はい」
……
「昨日、先生たち、みんなすごく褒めてたよ。
園香と由奈が顔を見合わせる。
「
それは世界的なプリマである
「まあ、これからもビシビシ見てくれるってことよ。美織さんは今回来てくれてる他の人と違ってずっといてくれるじゃない。なんか
「鬼の神ですか……」
「まあ、頑張って。羨ましいよ」
そう言って、あやめも準備を始める。
稽古場に少しずつ人が集まり始めた。
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