第38話 クララ登場 由奈
『キャンディボンボン』の踊りが終わって子供たちが整列しルベランス(踊り終わりのお辞儀)まできちんとする。
真理子とあやめが
「みなさんとても上手で先生はびっくりしています。きちんと踊れてます」
青葉が微笑み拍手をしながら言う。
「すごく上手です。驚きました」
徹も拍手をしながら微笑む。
元も頷きながら微笑む。
「みんな上手だったねえ」
「なにも問題ないんじゃないですか」
そう言った後、
「ジゴーニュおばさんもお疲れ様」
と言う。
徹が衣装副監督の
徹が
「
「え? すごい完成度ですね」
「なんか、音を外したりする子もいなかったみたいで……まあ、まだ今初めて見て、一回しか見てないから……でも、ちょっとびっくりしました」
真理子が、
「またこれからも指導お願いします」
と言い子供たちの方に向き直る。
「はい、みなさん『キャンディ』は楽しかったですか?」
「はーい」「はーい」
……
嬉しそうに手をあげて返事をする子供たち。
このあどけなく幼く見える子供たちを見ていると、まだ先程まで踊っていた姿が信じられない。
真理子が子供たちに微笑む。
「今日はこの後お姉さんたちとお芝居の練習もあるので少し休憩して待っていてくださいね」
「はーい」「はーい」
また、手をあげて嬉しそうに返事をする。そして、お母さんたちのところに行く。
◇◇◇◇◇◇
教室には次のレッスンの小学生高学年、中学生そして大人クラスのレッスン生が集まり始めた。来る生徒、来る生徒が、古都がいることに気付き驚きを隠せない様子だ。
今日はゲストの先生方が来るというので次のレッスンは小学生高学年以上全員が参加する。
他の生徒と同じようにレオタード姿で教室に入って来た一人の小学生。
「おはようございます」
その子は稽古場のゲストの先生方全員に一通り丁寧にお辞儀をしてストレッチを始めた。
他の生徒も先生方にお辞儀をしたり、挨拶をして教室に入って来る。一見他の生徒と変わらない。むしろ他の子より目立たない雰囲気の女の子だった。
しかし、
驚いたことに先程までメモを取ることに集中していた衣装の
次の瞬間、ゲストの
「クララ役の生徒さんですか?」
彼女を見つめながら言う。
「え……は、はい、クララ役の
花村バレエのスタッフはこの一瞬の出来事に驚いた。園香や他の生徒も何が起こったのかとその場に流れた空気を理解することができなかった。
頷く二人。
「
あやめが由奈を呼んだ。由奈は改めてゲストの先生たちの前で紹介された。
「クララ役をする
「よろしくお願いします」
改めて由奈がスタッフに挨拶した。
これだけのダンサーを前に、見た目よりしっかり堂々と挨拶ができる。小学生とはいえ、
「よろしくね」
どうしたらいいか分からず、思わず震えるようにその手を取る由奈。古都がもう片方の手でやさしく由奈の肩を抱く様に軽くハグする。
「いい舞台にしましょう」
古都が微笑む。
◇◇◇◇◇◇
全員の生徒が集まった。そこでまた今回のゲストが紹介された。小学校高学年から中学生、高校生、大人まで……
今まで経験したことがないたくさんのゲストに驚きを隠せない。
通常なら多くても男性のゲストダンサーが三、四人というところか……女の子の生徒が多いバレエ教室で、発表会をするとき女性のゲストダンサーが来ることはあまりない。
発表会でたくさんいる女の子の中でキャスティングを考えるとき、そこにさらに女性ダンサーを呼ぶことは少ない。
そこの教室の出身者でプロとして活躍しているバレリーナなど、教室に
男性の場合、舞台となると作品のなかで男性のダンサーが必要となる。特に全幕バレエを上演しようとなると男性がいないと難しい。
もともとこの世界は女性に対して、圧倒的に男性が少ない世界である。教室に男子、男性は少なかったり、あるいはいなかったりする場合もある。そこで難しい男性の踊りを踊れる男性ゲストが必要となる。
そんな中、女性が二人、さらにそこに
そして、今回の紹介でも公演がオーケストラ演奏になるということに一同驚いたようだ。
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