第36話 集まり始める公演関係者
今日は
青葉とこの前の男性ゲスト三名は前回と同じように来てくれた。一ヵ月振りに現れた四人だったが、男性三人は一緒に来た他のゲストに気を遣っている様子で、どこかそわそわした感じがあった。
一人は教室に入って来るとまっすぐ真理子とあやめのところに行き丁寧に挨拶した。青葉の息子であり青山青葉バレエ団の芸術監督である
真理子とあやめの二人も、まさかこの人が来てくれるとは思っていなかった。徹は花村バレエのスタッフ一人一人に丁寧に挨拶した。その振る舞いや口調は紳士的で普通の何気ない所作からも王子のような雰囲気が漂っていた。
美織たち三人は徹のところに行き丁寧に挨拶をする。徹がやさしく微笑みながら三人と話しているところを見ると、この三人がバレエ団のトップにいたことを実感させられるような気がした。
そして、
元への挨拶もそこそこに彼女のところに行き大きく頭を下げて挨拶をしている。
「そんなやめてよ。元さんにもきちんと挨拶してあげて」とその女性の声がする。
稽古場のみんなが、誰だろう? という顔でそちらに注目する。
「ええ」誰からともなく悲鳴にも近い声が漏れる……青山青葉バレエ団のプリマというばかりでなく、誰もが知るバレエ界の大スター
青葉がやってきて隣から言葉を添えてくれた。
「彼女『金平糖の精』をされる佐倉園香さん……上手なの。いろいろ教えてあげて」
世界で活躍するプリマである
そして、その後に続いて、女性ソリストの
残りの三人は誰なのか。一人はあやめと同じくらいの年齢の女性で
もう一人の女性にあやめが微笑みながら近づいて行く。
「
「ほんと、お久し振り」
高校時代は同じクラスになったこともあったが、学校帰りに仲良く遊ぶような時間もなかった。
お互いがどういう境遇か知っていたため「大変だね」などと話すことはよくあったが、親友というほど一緒に過ごす時間がなかったという。
お互いにそれぞれの発表会を見に行ったりという交流はあったそうだ。
そんなこともあって、あやめは
もう一人は
そんな総勢十一名が花村バレエを訪れた。
◇◇◇◇◇◇
今回の記念公演は今の段階から驚かされることの連続だった。
それは園香や生徒ばかりでなく、スタッフや主催者の真理子も含め予想を超えて大きな舞台になろうとしていた。
青山青葉バレエ団のゲストの人選に驚いたのはもちろんのことだが、花村バレエの関係者を一番驚かせたのは今回の公演がオーケストラの生演奏になるということだった。
数日前に青葉から真理子にオーケストラの生演奏でよいかという最終確認の電話があったそうだ。
不安もあったが大勢の意見を聞いてもまとまらないと思い。娘のあやめに相談した。そして、ホールの関係者にオーケストラピットの利用を確認し、オーケストラの生演奏を決定したそうだ。
花村バレエのスタッフに対しては、今日、この場でオーケストラの二人が紹介されることで、初めて今回の公演がオーケストラ生演奏で上演されるということが告げられた。
しかもオーケストラの演奏者は総勢五十名だそうだ。
園香ばかりでなくおそらく生徒で生のオーケストラ曲で踊った経験者はいない。本当に大丈夫だろうか……そんな不安がよぎる。
演奏の技術に不安があるわけではない。普段録音された音源で練習している者からすると生演奏で踊るということは、実際に本番で流れる曲(オーケストラの演奏曲)で練習することがほとんどできないのでは……という不安があった。
この後やって来る生徒たちには、そのとき初めて今回のゲストが紹介されることになる。
◇◇◇◇◇◇
青山青葉バレエ団
青山青葉(あおやまあおば)主催者
青山徹(あおやまとおる)青山青葉バレエ団芸術監督
元泰斗(げんやすと)青山青葉バレエ団プリンシパル、バレエ教師
九条古都(くじょうこと)青山青葉バレエ団プリンシパル
河合恵人(かわいけいと)青山青葉バレエ団プリンシパル
雪村希(ゆきむらのぞみ)青山青葉バレエ団ソリスト
月原静(つきはらしずか)青山青葉バレエ団ソリスト
栗原寿恵(くりはらとしえ)青山青葉バレエ団ソリスト
来生由香(きすぎゆか)青山青葉バレエ団衣装副監督
新高輪フィルハーモニー
青柳彩弥(あおやぎさや)新高輪フィルハーモニー、ヴァイオリニスト
恵那一矢(えなかずや)新高輪フィルハーモニー、指揮者、責任者
これが今回教室を訪れたメンバーだ。
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