第29話 青葉からのプレゼント

 喫茶店エトワールで食事をしながら今回の出演者の配役について、真理子とあやめは青葉あおば美織みおりに話をした。

 第二幕の踊りについては出演者の年齢やだいたいの踊りの経験については、真理子とあやめが東京に来たとき聞いていた。

 第一幕にもハレルキン、コロンビーヌ、ムーア人の踊り、そして圧巻の『雪の場』の踊りがある。個々の踊りについては美織と優一が協力してくれる。

 全体の演出については、次回以降、青葉が協力して創り上げていきましょうという。月に一度は来てくれるという。そして舞台が近くなれば、もう少し頻繁に来るという。


 そんな話の中、音楽について青葉から提案があった。それは真理子とあやめを驚かせる提案だった。


◇◇◇◇◇◇


 青葉はコーヒーを飲みながら真理子の表情をうかがうように言った。

「曲のことだけど」

「音響さんのこと」

「そう、私たちがよく舞台で演奏して頂いているオーケストラの方たちが、そのころ全国回って演奏していて四国にも来るらしいのよ」


 何を言いだすのかと驚く。

「それはさすがにお願いする予算がないわ」

「チケットに上乗せすれば?」

「売れなくなるわよ」

「うそうそ、私のお友達なのよ。その人たち。お友達価格でやってもらえるの。あなたがよければ、私たちからのクリスマスプレゼントよ」


「そんな……それに……みんな慣れてないから難しいんじゃないかしら」


「え? 生徒さんたち? それはオーケストラの人たちが合わせてくれるわ。その人たちすごい人たちばかりだから。一度演奏も聞いてほしいわ。考えといて」


 事情はよく分からないのだが、あるオーケストラが別のオーケストラと一緒になったり、少し人の入れ替わりなどがあったということだがバレエの演奏経験は豊富らしい。

 もともと両方のオーケストラをよく知っていた青葉は指揮者や団員、スタッフの人たちとも長年の付き合いらしく無理も聞いてもらえるという。


 しかし、何よりもあまりに唐突過ぎる話だ。あやめも驚きを隠せなかった。


◇◇◇◇◇◇


 そんな話の後、スタジオに戻る。スタジオは午後からのレッスンの小学生高学年から中学生、高校生、大人クラスまで、今日も昨日と同じで、ほぼ全員参加状態だった。

 そして、午後のレッスンも見学スペースはキッズクラスお母さんたちでいっぱいだった。子供たちは稽古場の周りに座って見ている。

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