第27話 打ち解ける時間
「ねえ、優一さん、本当にドロッセルマイヤーやるの?」
「だめかな?」
「だめでしょ。そんなの
「そんなのって、ドロッセルマイヤーとか、コッペリウスの魅力がわからないかなあ」
「じゃあ、バレエフェスティバルでドロッセルマイヤーやったら?」
「なにそれ。まあ、一番やりたいのはカラボスだけど」
グラスの水を見ながら言う優一。
「元さんのカラボスすごいですよね」
瑞希が果物を食べながら言う。
「うん、すごいね」
「あの人バレエダンサーじゃないわよ。あれ。俳優、俳優」
「言葉使わなくても全部観客に伝えちゃうよね」
「まあ、喋らないっていってもカラボスはだいたい見てりゃわかるけどね」
……
◇◇◇◇◇◇
周りがそれぞれいろいろな会話をしているのを聞くともなく聞いていた
「園香ちゃん。金平糖の精を踊るんだ」
「はい、恵人さんは
「まあ、僕の場合は
「元さんってすごい人なんですか? さっき瑞希さんと優一さんも話してた」
「うん、
興味深そうな表情で聞く園香に恵人も楽しそうに話す。隣で聞いていた奈々も二人が話している姿を見ていると少し
隣で果物を食べながら話を聞いている奈々。
「あ、彼女、この前の公演でオーロラ踊ったんです」
園香が恵人に言う。
「な、なに、その振り」
奈々が驚いた顔で園香を見る。
「へえ、すごい。全幕?」
頷く奈々。
「眠りは華やかだよね」
……
この会話の時間で園香も恵人とリラックスして話せるようになったと思えた。
その間、真理子とあやめは
その日はその後少しして解散となったが、次の日ゲストのダンサーがレッスンに合流することになった。
その情報にレッスン生や一緒に付いてきていたお母さんたちも、また明日も来ると言い出す。生徒はともかく、見学のお母さんたちが殺到するということに少し困った顔をするスタッフたちが真理子とあやめの方に目を向ける。すると
「
と言ってくれた。
そして、お母さんたちの方にやさしく微笑み。
「いつも大切なお子様たちの送り迎えご苦労様です。皆さんのご協力のおかげで素敵な舞台ができると思っています。お時間のある方は明日もご遠慮なさらずにいらしてくださいね」
そう付け加えた。
初めて
その彼女の口から改めて自分たちが送り迎えしていることや子供を教室に通わせていることに対して
その言葉は彼女の偉大さを感じさせてくれた。そして、どこか自分たちとは違う世界の人という印象しかなかった彼女に親しみを感じた。
◇◇◇◇◇◇
次の日、午後のレッスンからゲストも参加することになった。青葉と美織が何か話をしていた。
恵人たちは市内のホテルに宿泊しているということだった。微笑みながら園香たちに手を振って去って行った。
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