第26話 青葉からの提案


 園香そのか恵人けいと瑞希みずきが話している隣で、青葉あおばは真理子やあやめといろいろな話をしていた。コール・ド・バレエ(群舞)で人数が足りない分は青山青葉あおやまあおばバレエ団から団員の協力をさせて欲しいというもの。

 演出や演技指導などは美織みおりと優一だけでなくバレエ団からも指導者の協力を惜しまない。衣装、大道具などもスタッフと一緒にバレエ団のものを提供してくれるという。

 あやめも他のスタッフも、なぜこれほど花村真理子はなむらまりこに対して青山青葉が協力的なのか不思議に思った。

 あやめは青山青葉バレエ団に行ったとき、若い頃、真理子と青葉は一緒にバレエの勉強をしていたと言っていた。

 しかし、それだけなら他にも当時一緒に頑張っていたバレリーナはたくさんいたんじゃないか、名門バレエ団と呼ばれるバレエ団の主催者たちは同じ頃にバレエを学びバレエ団を立ち上げたのではないか、その中に二人がいたとしたら、本当に当時、特別な親友だったということなのだろうか。


 あやめも小さい頃から何度も青山青葉バレエ学校には練習に行ったことがあった。最初は母親の真理子が、このバレエ団を好きなのだと思っていた。

 好きだから娘をそこで学ばせたいのだと思っていた。時折、真理子が青葉と知り合いだというようなことも言っていた記憶があるが、ちょっと顔見知りというくらいだろうと思っていた。

 それはバレエ協会の会で会ったとき挨拶をするくらいだったので、母親の真理子が大袈裟おおげさに言っているのだろうと思っていた。


 今回、東京に行ったとき、母親の言っていたことは噓ではなかったのだと驚いたが、それでもこれほど親密とは思っていなかったし、今日もこうして青葉あおば本人が直々じきじきに教室に訪ねてきたことが、やはり不思議だった。


 普通こういう場合、こちらからお願いして来て頂くのが普通だ。今日のように教室を訪ねて来る日は、あらかじめこちらがスケジュールを確認し、飛行機のチケットも用意して、いよいよ来るときは空港まで迎えに行くものだ。

 気が付いたらゲストのダンサーが教室に来ていたなどということはあり得ない。


 今回の公演のことがなければ、あやめは母親の真理子が青山青葉バレエ団とこれほど関係が深いとは思っていなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る