第17話 敬意
その日のレッスンも昨日と同じで午前中はキッズクラス。小学生の低学年までのレッスン。
午後は
その午後のレッスンに
「ええ、なに? これ」
奈々が驚いて言う。
「すごい人ねえ」
園香も人の間をすり抜けるように稽古場に上がって行く。
稽古場には小学生から中学生、高校生、大人クラスまで、ほとんどの生徒が来ているのではないかと思われるほどだった。
しかも、午前中のレッスンで帰ったはずのキッズクラスの子もお母さんたち同伴で見学席にほとんどの子が来ているようだ。
教室に上がってきたあやめも驚いた。
「なんなの?」
その様子に気付いた真理子も稽古場に来た。
「みなさん、見学されたいのはわかります。でもお稽古の邪魔にならないようにしてくださいね」
そんな中、階段から教室の受付までひしめく様に集まっていた人達がスッと両脇に別れるように道を開けた。その間を三人の男女が歩いて来た。
サングラスをかけ白いスカーフを頭に巻いたカジュアルな服装の女性を先頭に、薄いピンクワンピースに薄いピンクのガルボハットというのだろうか、つばの広い帽子をかぶった女性。
そして、爽やかなTシャツを着た男性が彼のバッグとワンピースの女性の物らしい薄いピンクのバッグを持って歩いて来た。
稽古場にひしめく様に集まっている誰もが呆然と立ち尽くす。
三人は稽古場にいる真理子とあやめに気が付くと、まっすぐ二人のところに歩いて行く。
真理子とあやめの前に来ると、瑞希と優一がスッと美織の後ろ立つ。美織が三人の先頭に立ち、三人とも丁寧に深々とお辞儀をした。
「花村真理子先生とあやめ先生ですね。
いつも何かと先頭に立って行動している瑞希ではなく、男性の優一でもない。
一見、三人の中で一番頼りなさそうに見えていた、どこか世間知らずのお嬢様のように見えていた美織の後ろに瑞希と優一が従うように付いて、花村バレエ研究所の主催者真理子とあやめに敬意を払いお辞儀をする姿。
その姿を見た瞬間、そこに居合わせた全員、小学生から大人まで、小さな子供を連れてきているお母さんたちまで、花村バレエに関係するすべての人が心を突き抜かれるように感じた。
京野美織、彼女こそが世界のプリマなのだということを実感した。
このお辞儀をする姿で、三人が花村バレエに係わる人たち全員に敬意を示してくれていることを感じた。
それは主催者の真理子とあやめばかりでなく、ここのバレエ教師に、ここに通うすべての生徒たちに、ここのバレエ教室に係わるすべてのスタッフに、更にはここへ小さな子供たちを通わせているお母さんたちに対しても……
◇◇◇◇◇◇
花村真理子も丁寧に挨拶を返した。三人は真理子と少しの会話をした後、更衣室の方へ行った。
更衣室から出て来た三人は昨日もそうだったが、ほとんどレオタードだけという感じでレッスンを受ける。
練習の時はウォーマーやTシャツを着るダンサーもいるが、美織と瑞希はレオタードに薄手で丈の短い巻きスカートを巻くぐらいだ。優一もタイツ一枚という姿でレッスンを受ける。
このレベルのダンサーに、これだけ裸に近いような姿で踊られると、その身体能力の凄さが更に強調される。
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