第14話 青山青葉バレエ団をあとに
「ありがとう青葉先生。バレエ団の団員さんは皆さん素晴らしい方ばかりだとお見受けしてます。協力頂けるだけで本当に嬉しいわ」
「いえいえ、それに先程、あやめさんが電話で話されていたと思うけど、既に三人はゲストではないけれどそちらで使って頂けるでしょう」
微笑みながら言う青葉に、真理子が改めて聞き直した。
「その三名はどういう経緯で高知へ」
「驚かせたわね……
「他の二人は?」
微笑みながら青葉が真理子とあやめを見る。
「
二人はずっとパートナーとして踊っていた。誰もがきっと結婚するだろうと思っていたが、改めてそうだったのかと思った。
「
「彼女は、どうして? って感じよね」
青葉は少し外の景色に目をやるようにして、
「彼女、国際コンクールを目指しているのよ。京野さんと久宝君も受賞している世界的に有名なコンクールね。それで二人の
「バレエ団活動を辞めてまで?」
「彼女、京野さんをお姉さんのように慕ってたから、京野さんがいなくなってしまったら、何か喪失感のようなものを感じると思ったんじゃないかしら。何かを見失うような……彼女の固い意志もあったから引き止められなかったのね……それと彼女、バレエ団は退団してないのよ。舞台で必要な時は出演してもらう約束なの。」
「そうなんですか……京野さんと久宝さんも?」
「二人は退団した形になっているの。でも、この二人に関しては素晴らしいダンサーだから、今度はこちらがゲストダンサーとして迎えるつもりよ」
いろいろな事情があって三人が花村バレエに来ることになったことがわかった。青葉が思い出したように言う。
「そうだわ。来週、バレエ協会の関係で関西に行くことがあるのよ。その時、ついでと言ってはなんだけど花村バレエに寄らせて頂いてもいいかしら?」
「関西と四国はちょっと違う気もするけど、来て頂けるんだったら喜んで、でも、どうして?」
「お稽古場を見学させて頂きたいから」
これには真理子もあやめも少し戸惑ったが、ゴールデンウィークが明けてすぐ一度教室に来てくれることになった。
ゲストダンサーについては追って連絡するということだった。
◇◇◇◇◇◇
話が終わり応接室を出たところで、あやめは一人の女性とぶつかった。驚いた顔をするあやめに、その小柄で華奢な女性は申し訳なさそうに頭を下げる。
「ごめんなさい。大丈夫でしたか?」
突然のことで驚いたが、少し肩が触った程度だと思った。背格好もあやめと変わらない感じの彼女は、どこか上品であやめのことを気遣ってくれる。
「大丈夫でしたか? 本当にごめんなさい」
もう一度心配そうな表情で謝ってくる女性を見て、あやめはその場に崩れそうになった。
その女性は、この数年間、英国ロイヤルバレエ団でプリンシパルとして活躍し、つい最近日本に帰ってきた
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