第13話 美織のレッスン 4 優一

〇デガジェ


 この動きは動きとしてはジュテと同じような動きだがデガジェは足を浮かせた四十五度くらいの位置まで上げて止めるが、足をその位置まで引き伸ばすような意識。そして元に戻す。

 ジュテはその位置までシュッと上げて止める意識。イメージとしてデガジェは歩く時、足を出す感じ。ジュテはジャンプの前の動きというイメージ。


〇フォンデュ


 「溶ける」「やわらかく」というような意味があるチーズ・フォンデュなどのフォンデュ。右足のフォンデュでは、両足膝をゆっくり曲げなら、右足はクペといい右足先をゆっくり浮かせ、左足首あたりを通るように、左足はかかとが上がらないところまで曲げる。

 そこから軸の左足はゆっくり伸ばす。同時に右足は前方四十五度、足を浮かせた位置までゆっくり伸ばす。右足と左足が同時に伸びきるように動かす。それを前、右、後。


〇フラッペ


 フランス語で「打つ」「たたく」という意味がある動き。足先で床をたたくように動かす動き。右足を浮かせ、左足のくるぶし上あたりで止める。その位置からシュッと前の床をたたくように足を出す、そしてシュッと元に戻す。リズミカルに速い動きの練習。


〇ロン・ド・ジャンブ・ア・テール

〇ロン・ド・ジャンブ・アン・レール


 ロン・ド・ジャンブは足先で弧を描くような動き。ア・テールはつま先を床に付けた位置で弧を描く。アン・レールは足を四十五度くらい浮かせた状態で弧を描く。軸を取られないように気を付ける。いつでも左手をバーから離せるように軸を感じる。


〇アダージオ


 ここまでの動きをすべて注意しながら、ゆっくりした動きの中で、センター・レッスン、踊りにつなげていけるように体を動かす。


〇グラン・バトマン


 大きく足を振り上げる動き。タンデュ、ジュテの位置を通り、軸足を取られない一番高い位置まで振り上げる。

 バーから離れてセンターで動けることが大切なので軸を取られないところで動かすのが大切。


◇◇◇◇◇◇


 プリエからグラン・バトマンまで、すべて左右の足について行う。そして、レッスンはバーから離れ、稽古場の中央での練習、センター・レッスンにつながっていく。


◇◇◇◇◇◇


 センター・レッスンに入る前、美織みおり瑞希みずきのところに行って何か話している。瑞希は頷きながら美織の言うことを聞いていた。


 園香そのかと奈々が稽古場を見回すと優一の周りに中学生や小学生の男子が集まっている。中学二年生の来島樹くるしまいつきが、いきなり彼の前でピルエットを回りだす。二回転回って吹っ飛んでいる。

「もう、あの子たち何やってんの」

奈々が注意しようと近づいていくと、優一がやさしく微笑みながら、

「いいんだ。バレエが好きなんだ。この子たち」

 そう言って、先程二回転で吹っ飛んだいつき肩甲骨けんこうこつの間辺りに手を当て、あごを少し引かせるようにし背筋を伸ばさせる。

「この位置、まっすぐだ」

腹筋の辺りに手を当てる。何か一言二言アドバイスをした。

「さっきバー・レッスンで意識したことに注意して力まなくていいから、床を蹴る足を少し強くしてごらん」


 いつきはまるでさっきとは別人のように美しい姿勢でプレパレーション(動きに入る前の姿勢)を取った。

 それはどこかのプロのバレエダンサーのように見えた。そこから軽く床を蹴って、スッと一本の軸にまとめるように回る。回転している中心に一本の軸が見える。そばで見ていた奈々も目を疑った。

 そのまま六回転した後、正面で止まりゆっくりかかとを下ろした。何事もなかったかのようにきれいにターンを終わった。


「いいじゃん」

 そう言って優一はいつきの肩を叩いて美織のところに行った。

奈々だけでなく、園香もスタッフの秋山、北村も言葉を失い優一の方を見た。


◇◇◇◇◇◇


 センター・レッスンではバーの時にはなかった前後左右へ動く動き。ゆっくりした動きアダージオから速い動きアレグロ。ジャンプ。稽古場を斜めに使っての動き、大きく回るように踊るマネージュ。アンシェヌマンといって様々な動きを組み合わせてより踊りに近い形の練習をする。

 最後はゆっくりした踊り(動き)で練習を終わる。

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