第7話 戸惑う花村バレエのスタッフたち

 控え室では奈々から事情を聴いた北村も動揺が隠せない。花村に連絡を取りたいと思うが、どこに連絡を取ったらいいかわからない。

 花村真理子のスケジュールを確認すると、今日はちょうど青山青葉あおやまあおばバレエ団を訪問することになっているようだ。バレエ団に電話をしたら真理子やあやめに連絡がつくだろうかと思い電話をしてみることにした。

 北村自身も青山青葉あおやまあおばバレエ団に電話を掛けることなど初めてのことだ。

 電話に出たバレエ団の女性が上品な口調で対応してくれた。ちょうど真理子とあやめの二人がバレエ団を訪れていて、あやめに繋いでくれると言う。


◇◇◇◇◇◇


 バレエ団の応接室で青葉あおばと話をしていた真理子とあやめ。青葉の言う『三人のバレエダンサーが高知へ行く』という意味がよく理解できてなかった。

 詳しく聞こうとしていたところに一人の女性が入ってきた。花村バレエから電話が入っているという伝言だった。

「電話、こちらで取れるかしら」

女性と少し話していた青葉があやめに電話を繋いでくれた。


◇◇◇◇◇◇


 受話器の向こうで北村の慌てている様子が伝わってくる。

「あやめ先生。大事なお話中にすみません」

「いえ、いいのよ。北村先生。どうしたの? 何かあったの?」

「それが、今、教室に京野美織きょうのみおりさんと久宝優一くぼうゆういちさんと河合瑞希かわいみずきさんの三名がいらっしゃってます」

「ええ!」

青葉と真理子の方を振り返るあやめ。


「こちらのバレエ団さんから京野美織さん、久宝優一さん、河合瑞希さんの三人が教室に来られてるそうです」

その言葉に真理子も驚く。


青葉は微笑みながら、受話器を持ったあやめに言う。

「タイミングがいいわね。ちょうど今着いたのかしら。その三人のことは、その人たちが言うように対応してあげてください」

 あやめは、まだ青葉の言っている言葉の意味が十分理解できていなかったが、状況を理解して北村に伝えるには、この電話では難しいと思った。

「ごめんなさい、北村先生。私たちも、ちょっと状況が呑み込めてなくて、とりあえず、その三人が言う通りに対応して。くれぐれも失礼のないようにお願い。また後で連絡するから」

「わかりました」

 お互い状況が十分理解できないまでも、とりあえず北村としても、今の教室の状況は伝えられたと思った。奈々の方に振り返る北村。

「稽古場に行きましょう」

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