第4話 花村真理子バレエ研究所

 市内の中心に位置する場所に花村バレエはある。建物は一階にバレエ教師の控え室や生徒たちの更衣室、休憩室のようなスペースがあり、二階と三階を吹き抜けにした稽古場があった。

 その上がバレエ教室の主催者である花村真理子はなむらまりことあやめの自宅になっている。建物にはエレベーターもあるが生徒は使わないことになっていた。家の前には車数台分の駐車場もある。

 ここが本教室で、ここの他に市内に二箇所教室があった。一つはこの教室のすぐ近くで本教室から歩いて行けるほどの距離にある。

 そして、もう一つは県内で有名な県民文化ホールの隣に教室があった。その他には県内数カ所の市で場所を借りてバレエ教室を開いていた。


 バレエ教師は真理子とあやめの他に三名、このバレエ教室出身の北村裕子きたむらゆうこ秋山美紀あきやまみき、そして真理子の妹の小林麗華こばやしれいか

 ここの生徒で大学生の園香そのか奈々ななもアルバイトとして指導の手伝いをしていた。


◇◇◇◇◇◇


 通っている生徒の大半は小さな子供たちである。三歳から小学入学前までの子供が二十人ほど。小学生が三十人程度、中学生が六、七人、高校生が四、五人、そして大人クラスが二十人ほどという構成になっている。

 小さな子供は比較的多いが小学生も高学年になると中学受験などを理由にやめてしまう。

 中学生、高校生になると、新しい生活が始まり、新しい友達ができるなかで学校の行事や勉強が忙しくなる。そして、ここでも受験を機にやめていく生徒がいる。

 また小学生ぐらいまでは親に連れて来られたり、親の方が子供にバレエを習わせたいという理由から通っていたが、中学生、高校生になって自分の意志でやめていく場合もある。

 しかし、そんな中でもバレエと向き合い毎日ひたむきに練習を続ける子もいる。

 発表会に出演し温かい観客に包まれて踊る楽しさ、コンクールに出場し審査の目で認められる嬉しさ、そういうバレエの魅力に取りつかれる者もいる。

 小さい頃始めたバレエを小学校、中学、高校と益々好きになり、生活の一部のように続けていく子も数多くいる。

 大人クラスに通う者も様々だ。時間に余裕が持てる様になり趣味でバレエを始めたとか、小さい頃バレエをしたかったができなかったとか、中学、高校のとき一旦バレエをやめたが、またバレエの世界に戻ってきたとか……そんないろいろな人が和気藹々わきあいあいと楽しんでいる感じだ。


◇◇◇◇◇◇


 園香と奈々は小さい頃からずっとバレエを続け、受験のときもできる範囲で教室に通い頑張ってきた。

 二人とも地元の大学に進み、今でも花村バレエでバレエを続けている。同じ世代の子でここに通っていた子たちの中には県外の大学に進み、そこでバレエを続 けている子もいれば、やめてしまった子もいる。

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