第3話 名門青山青葉バレエ団
国道二四六、青山通り。表参道駅から歩いてすぐの場所であるが、国道から少し入ったその場所は都心でありながら、都会の雑踏から切り離された閑静な場所だ。
そこに名門
花村真理子とあやめが門を入る。入り口の扉を入ると少し開けた広間の向こうに稽古場が見える。
そこは小学校の体育館程あるのではないかと思われる稽古場に一体いくつ置いてあるのだろうたくさんのレッスンバーが並んでいる。その間でたくさんのレッスン生が稽古前のストレッチをしている。
「おはようございます」「おはようございます」
あやめたちに気が付いた生徒が挨拶する、それに合わせ稽古場にいた生徒が皆挨拶してきた。戸惑いながら、あやめも挨拶を返した。
生徒の一人が小走りに近づいてきた。
「おはようございます。花村先生ですね。こちらへどうぞ」
すれ違う数人のレッスン生が彼女たちに挨拶をして通り過ぎて行く。
その広い稽古場の隣にも普通の学校の教室ほどの大きな稽古場があり、大人の男性のダンサーが十数人演技の打ち合わせだろうか、舞台での動きを確認をしていた。その先にもまだ別の稽古場があるようだ。
階段を上がり三階まで行く。奥の応接室に案内された。部屋の中央には大きなテーブルがあり、それを囲むように美しい茶色のソファーがある。部屋には美しいマイセンの磁器の貴婦人や花瓶が並んでいる。
「こちらでお待ちください」
そう言って、そのレッスン生は一礼して部屋から出て行った。
どうしたらいいか分からず立ち尽くしていると間もなく
「こんにちは。お久し振りね。どうぞ」
ソファに座るよう促された。生徒らしい女性がテーブルに紅茶を運んできた。
「どうぞ」
と真理子とあやめに紅茶を勧め、
「十二月に舞台だそうね」
「ごめんなさい。忙しい時に」
自分の母親である真理子が、バレエ界の重鎮である
「ああ、あやめさん、私とあなたのお母さんは、若い頃、東京で一緒にバレエの勉強をしていたの。あなたのお母さんは、そのあと四国に行ってしまって……私は東京でバレエを続けた……親友なのよ」
「え……」
あやめは言葉を失った。
「ごめんなさいね。言ってなかったわね」
それから、少し他愛もない話をしたあと、また十二月の公演の話になった。
「ゲストダンサーのことだけど、言ってなかったけど三人ほど高知に行くことになっている者がいて、その三人はあなたのバレエ教室に自分たちから行くと思うの」
言っている意味がよくわからなかった。
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