第7話「アス・エスケレト社製ドクトゥス」
手のひらで起動したホログラム投影端末は、上面の中心に設けられたドーム型のレンズパーツから光が、あふれ出して人型を作り出した。
ホログラムが鮮明に映し出したその人型は、高級そうな赤い生地と金色の糸で作られた貴族の様な衣服を纏い、更には豪華な装飾品でゴテゴテと全身を飾り着けており、如何にも成金の様で悪趣味に感じる。
どうやら俺の知る人間とは少々違い、血色の悪そうな黄色い肌をしており、顔には鼻が無く大きな鼻腔が露出していた。
『陛下、この度はクラウディアン共との争いを仲裁して頂き、誠に感謝いたします。今回は、感謝の品として私共の新商品をお届け致します。ご賞味下さい。』
俺が、見慣れない顔の造形に衝撃を受けていると、ホログラムの人物がうやうやしく礼をして話し始めた。
内容を聞く限りではこのケースは、裏の事情に精通した高位の人物への贈答品だった様だ。
「ガス、今映ってた奴が何者か予測つくか?恐らくこのUSBの製作に関与してる人間だと、思うんだが。」
「すみません。ホログラムからは、セリアンの男性である事と背景から撮影場所が、宇宙船内の貴賓室である事しか分かりませんでした。」
「嫌、それだけでも推理の役に立つ。ありがとう。」
俺は、ホログラムで話していた新商品がケース内に有ったUSBであり、そしてそのUSBの中身はガスの説明に出て来た電子ドラッグだと予想した。
ガスにホログラムの人物に心辺りが無いか確認したが、彼のデータベースにはこの人物に関する情報は無かった様だ。
「ガス、この手のケースは所有者の再登録は簡単なのか?どうもこの店主の持ち物とは思えないが。」
「はい。一度、開封できれば再登録は簡単に出来ます。ここで取り扱っている違法な品物を見る限り簡単に開ける事が出来たかと。」
「やっぱりか。店主が謎の輩に狙われたのは、不味い品を買い取った上に開封までしたからかな。んで、この女は、データベースにヒット無しか?」
「現在、公的な賞金首データベースを確認しましたが、ヒット無しです。」
「こいつが何処から来た誰かは、分らないままか。一旦、他の事をするか。」
「何をなさいますか?幸い時間と物資は、豊富に御座いますよ。」
ガスの言う通り、様々な物資に修理や加工用の機械まであるので何でも出来るし、スキルを取る事も出来る。
もう一つの【スペースポートへ向かえ】を先にクリアするには、危険な砂漠を抜けて治安の悪い港町に行く必要がある。
そんな状況で必要な物は、武器と防具に情報だ。
「ガス、取り敢えずテネブリアンをお前が操れる様になるモジュールはあるか?あったら、それをマークしてくれ。それと状態の良い人間が扱える武器もリストアップしてくれ。」
「かしこまりました。他にご注文は御座いますか?」
「直ぐに起動出来そうなロボットの内、暴走とかしない奴もリストを作ってくれ。身体が欲しいなら、ガスのチョイスに任せるが?」
「いいえ。それには及びません。全てのリストアップはお任せ下さい。」
ガスが黙って作業を始めたので俺は、床の仏様二人を近くの中身をひっくり返して空にした棺桶代わりのコンテナへ入れてやる。
俺が意外とタッパのあるレザルタントの店主、を運んでいる内にガスは、仕事を終えた様だ。
ヘルメットにガスからの通知が有るので開いみると、メッセージから三つの情報にアクセスできる様に成っていた。
俺は、取り敢えず武器のリストを開いてみると。ズラズラと武器の名前らしき物が並んでいる。
今は名前順に並んでいる用なので、種類ごとにソートしてみると、大半が
「ガス、スペースポートで見咎められないレベルの武器とそうで無い物に分けてくれるか?後、このブラスターガンについて説明してくれるか?」
「かしこまりました。リストの再分類終了。見咎められな物とそうで無い物、隠し持てるサイズの物に分類しました。ブラスターガンとは、銃内部でエネルギー光弾を作成し撃ち出す武器を指します。」
「一般的に普及している物か?」
「はい、この世界では一般的な銃火器に使われるテクノロジーです。個人での武装から軍の船や要塞に搭載される火砲に至るまで幅広く利用されています。船や要塞で利用される大型の物は、ブラスターキャノンと言います。」
「ガス、テネブリアンに付いているアレもブラスターか?」
「テネブリアンに装備されているのは、軽レーザータレットです。同サイズのブラスターよりも高出力なエネルギーガスとジェネレーターが必要な武装ですが、見合う威力が御座います。」
「成程ね、それでジェネレーターやらなんやらを乗せ換えてたのか。手が込んでるな。あんな改造は一般的なのか?」
「そうですね。そこそこ大きな犯罪組織や傭兵、反政府組織なら所持しててもおかしくありません。単独で行動しているなら傭兵と判断されるでしょう。」
俺は、テネブリアンの完全武装振りを思い出してガスに確認してみた。
「なら、問題無いな。最悪、テネブリアンのデチューンをするかと心配した。」
俺は、テネブリアンに関する作業がこれ以上増えなかった事に安堵しつつ、三つのリストから幾つかの武器を選んでいく。
俺は、拳銃型とライフル型ブラスターを一丁ずつと、スーツに取り付けられそうな装備品を選んだ。
リストアップした物に位置を示すマーカーを付け、何時でも取りに行ける様にしたので、次に安全に起動する事が出来るロボットのリストを確認する。
ロボットは、戦闘用から介護用まで様々な種類を保存状態良く取り揃えていた様で、安全に起動出来そうなモノだけでもかなりの量が有った。
俺は、暗殺用や戦闘用等の語句が並ぶ欄から気になるモノが無いか見て行くと、前衛級メカニックロボットの文字が目に留まる。
「ガス、この前衛級メカニックロボットってどんな奴なんだ。」
「はい。此方は、アス・エスケレト社製ドクトゥスのメカニックタイプですね。戦場の最前線で修理及び整備活動を目的に作られた二足歩行ロボットです。中近距離の戦闘と様々な機械の修理及び整備活動を行う事が出来ます。」
ガスがヘルメットに表示したロボは全高が2メートル後半程で、肩幅があるが細身のシルエットをしており、シリンダーが組み込まれた黒い骨格と、内部の重要機関を黄色く丸みを帯びた装甲が包んで居る。
手には人間と同じサイズ感の五指が存在しており、道具や武器は共通の物を使えるだろう。
頭部の上半分をオレンジの樹脂製に見えるバイザーが覆っており、その内側に単眼カメラとカメラを稼動させる為のレールが確認出来た。
レールの周囲には、固定式のセンサーらしきレンズが幾つか左右対称に埋め込まれている。
「こいつは、此処での作業でも外に連れても使えそうだな。ガス、此奴にもマーカーを指してくれ。」
「かしこまりました。」
俺は、マークした物を集める為に倉庫内を歩き始めた。
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