第3話「砂漠地帯を移動するのに最適です」
視線操作でメニュー画面に戻り、スキル機能を開くと此方も複数のタブに分かれていた。
サバイバルに役立ちそうなものや戦闘に関するもの、料理やマナー等の生活に使用しそうなものまであり、少ないポイントの使い道に悩んでしまう。
宇宙戦闘機やホバーマシン、ブラスター等のSFでお馴染みの単語に関するスキルも多く有るので興味を惹かれる。
手元に無い乗り物や武器のスキルは、必要無いと判断出来る。
俺が今使える物は、環境適応能力の高いスーツと高性能なスマホに少量の保存が効く食料ともう一つの建物に収容された大量のスクラップだけなので、スキルを習得してこれらを有効に活用しなければならない。
ガスには、机に有ったPCに接続しこの施設や元の持ち主、周辺の町の内情と言った今後の行動に必要と成りそうな情報を検索して貰っている。
取り敢えず、今後も長い付き合いに成りそうなスーツを強化する為に【スーツ改造】のスキルを取得する事は、決まりだ。
このスキル取得画面に記載されている説明によると、俺のスーツに資材を使用して様々な改造を施す事が出来る様に成るスキルで、必要なコストも1SPとお手頃だったので直ぐに取得した。
「施設内に貯蔵されたジャンクの確認が、終わりました。再利用が期待できる物が多くあります。中でも高機動多脚マシンは、砂漠地帯を移動するのに最適です。」
「放置されてると言う事は、壊れてるか燃料が無いかだ。ここの機材は、まだ使えるのか?」
情報を漁っていたガスから、移動手段についてうれしい報告が有った。
「機材に破損は御座いません。軽微な設備不良が疑われる程度です。【機械修理】のスキルを取得する事をおススメ致します。」
「そうか。そのスキルも今後、色々な場面で使えそうだし取っておくか。俺は車の運転位なら出来るが、あのマシンを操縦するのは難しいかもしれないな。もしかしたらスキルの取得が要るかも。」
多脚マシンには一人乗りのコックピットが付いており、中には操縦桿が二つとスロットルレバーの様な物が見えるが、ハンドルでしか乗り物を運転していなかった自分が、それを使って操縦出来るのか疑問だった。
「修理の際に私を接続する為のポートを取り付けて頂けたら、代わりに運転致しますのでスキルの習得は必須では御座いません。」
「それならスキルの取得は、機材を修理して多脚マシンを見てから考えるか。」
ガスからの返答を聞いて機械修理のスキルを取る為にスキル画面で、確認してみるとこれも1SPとお手頃だった。
しかし、スキル名の横にスーツ改造には無かったレベル1の表記を見つけた。
「ガス。このレベルってのは、熟練度って考えであってるか?スキルを使うと上がる感じのさ。」
「その理解で合っています。レベルは、SPを消費して上げる事も出来ますが、頻繁に使用する事でも上昇致します。」
「なら、無理にSPを消費して上げる必要は無いな。今は1レベで良いか。」
機械修理スキルの説明を見る限り、レベル1でも簡単な整備不良なら修理できそうなので、修理機械や他のジャンクを修理して、レベル上げを行えば多脚マシンも修理出来そうだ。
スキルの確認を終えたので、ついでとばかりにクエスト機能も確認する。
クエスト機能の画面を開くと、未クリアの欄に二つのクエストが掲載されていたので、詳細を確認して行く。
クエスト名は、【多脚マシンの修理】と【違法廃品回収業者の行方】の二つだった。
内容を薄っすらと察する事は出来るが、多脚マシンの修理から詳細を確認して行く事にした。
クエスト名:多脚マシンの修理
クエスト内容:違法廃品回収業者の加工施設に放置されたMLMー23C(民生モデル)を修理せよ。
報酬:2SP、センサーモジュール
「ガス。このセンサーモジュールってなんだ?」
「こちらは、スーツの改造に使用できるパーツです。こちらを追加する事で、今よりも多角的で詳細なスキャンの使用が出来るようになります。」
チャレンジと違い、SP以外の報酬が有ったのでガスに確認した所、スーツの強化アイテムの様だ。
「ガス。これの取り付けに他の資材は要るのか?」
「いえ、必要御座いません。」
「そうか、ありがとう。情報漁りに戻ってくれ。」
「かしこまりました。」
ガスに追加で気になる事を確認し終えると、もう一方のクエスト内容を確認する事にした。
クエスト名:違法廃品回収業者の行方
クエスト内容;人里離れた砂漠に放棄されていた違法廃品回収業の施設を探索し、業者の行方を掴め。
報酬:3SP、150アウレ
またしても、SP以外の聞いた事の無い報酬が記載されていた。
「ガス。アウレって言うのが、報酬に載ってるんだけど、この辺の通貨か?」
「はい。主に帝国領で使用されている共通通貨です。他にもこの星では、共和国通貨のコルルナが流通しているようです。」
思いがけない所で、この世界の通貨に触れる事が出来た。
この施設には、携帯し易そうな金品が無いので、この報酬は都市に移動した時やこの世界の住人に遭遇した時に使えそうだ。
「ガス。150アウレでどれ位の買い物が出来るんだ?」
「そうですね。私の知る限り、威嚇用の小型ブラスターピストルや格安の中古整備ロボットを買えます。」
「そこそこの大金って感じか。クエストを達成する価値は、十分に有りそうだな。」
「記録によると、後ろ盾の組織と問題を起こした様ですね。この端末には、他に有用そうな情報は御座いませんでした。」
「なら、多脚マシンの所に行くか。此処に居ても仕方ないしな。」
ガスから、端末の情報を取り終わった事を告げられたので、左の二の腕にスマホをマウントして事務所から出た。
外に出ると、眩しい光が目に飛び込むが、ヘルメットの調光機能でそれも直ぐに治まった。
トランスポートを挟んで斜め向かいに有る修理施設は、今出た小屋を6倍にしても届かない程の大きさなので、探索にも時間が掛かりそうだった。
搬出用の大型ゲートが見えるので、取り敢えず近付いて見た。
ゲート横の壁にコントロールパネルらしき物が取り付けられているが、弾痕によってスクラップと成っている。
どうやら中を先に漁った連中は、荒っぽいノックをして入室した様だ。
搬出用の大型ゲートの横に通用口が有ので、システムを掌握したガスに開けて貰い中へと入る。
施設内部には、大小様々なコンテナや複数のマニュピレータを備えた機械、壁に掛けられた工具らしき物等、目を引く物が多くある。
その中でも最も目を引くのは、円形の台座に鎮座する多脚マシンだった。
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