第2話「ガス、常に外部の監視を頼む」
上空から目と頭皮を焼く太陽光が降り注ぎ、それにしっかりと熱せられた黄色い砂、そしてそれが作り出した激しい高低差の有る地形、更には喉を干上がらせる乾燥した大気が辺りには満ちている。つまり、この砂漠は生物に対して非常に過酷な環境と言う訳だ。
そんな極限状態の中なんとか目標地点の人工物へ無事に辿り着けた。只の一般人だった俺が上記の極限環境を歩き抜けたのは、俺の喋り相手と成ってくれたガスと今着ているスーツのお陰と言えるだろう。
歩き出して暫くは人生初の雄大な青空と広大な砂漠の景色を堪能してたが、現代のネット環境に浸かり切った俺には直ぐに見飽きてしまう代物だった。ある意味、病気かも知れない。
折り返し地点を過ぎる前に景色に飽きてしまった俺は、足を止めはしないものの苦痛を感じていたが、手に握りしめた物が何だったのか思い出す事が出来た。SNS等は出来ないがお喋りの相手はずっと傍に居たのだ。
最初の話題は手近な物であるスーツやスマホについての詳細な説明だ。その後はこの世界について色々と質問した。そしてその質問の全てにガスは応えてくれた。
ガスによるとこのスーツには、高度なサバイバル能力と機能拡張能力を有しているそうだ。実際の所、この灼熱の環境下でも脱水症状を起こさずに居られるのは、スーツの体温調節機能のお陰らしい。
更にこのスーツにはお楽しみとしてカスタマイズと強化機能が搭載されており、スキルの取得と資材の投入で能力の追加と強化が出来るそうだ。
強化や追加無しで使える機能としては、スーツの各所に装備品を取り付けれるフリーマウント機能と頭部保護用の多機能ヘルメット展開機構が有った。
そんな便利な物が有れば早く言ってくれと思いながらそのヘルメットの展開方法も聞くと、声に出してガスに指示をするだけで良いらしい。
直ぐにヘルメットの展開を指示すると、機械的な首輪がスーツの上に形成されそこからフルフェイスタイプのヘルメットが構築された。
ヘルメットのお陰で今までずっと太陽光に晒されていた頭部も乾燥した空気に虐めらていた喉、強い日差しでチカチカする目や砂埃が不法侵入しまくる耳や鼻、それらの全てが抱えていた悩みとおさらば出来た。
ヘルメットには外部からの保護以外にマウント機能を使用してスマホとスーツを接続する機能が有り、バイザー部分にスマホの画面を表示出来るディスプレイも付いている。早速、それを使用する為に熱い中ずっと握りしめていたスマホを二の腕へと固定し、ヘルメットのディスプレイとリンクさせる。
ディスプレイは直ぐにリンクを完了させ、画面の上部にスマホの高解像度の透過マップが表示された。これで先程まで進路を確認する為に何度も手元のスマホに視線を落とすと言う動作をせずに済む。さらには、眩し過ぎる太陽光でとても見辛い画面ともおさらば出来た。
細かな操作は音声認識や視線に空中投影キーボードで出来る様に成っており、小さな端末を指先で操作するよりよっぽど楽な仕様だ。なんだったら、ガスに声を掛けるだけで細かな操作もしなくて良い。
機能の把握や操作の練習を夢中で行っている内に仮設事務所の様な建物と大型の倉庫と言った感じの建物で構成された施設に辿り着いた。その施設の周囲は奇妙なポールで囲われているだけで、防犯設備等は見受けられない。
中に入らずに外観を見ていると、砂に埋まっているがヘリポートの様な大型の台と途中で折れて地面に倒れている看板を発見する。その看板を見る限りこの施設では、廃品回収を行っていたらしい。看板の見知らぬ筈の文字が何故か読める事は、無視する。
ガスによると、此処は惑星を自治している政府に店舗登録をして無い違法な施設で今は持ち主に辺りそうな生体反応も無い為、放棄されていると判断したとの事だ。
暫く歩き詰めで疲れていたので早速、事務所らしき小屋へ侵入する事にした。
小屋のスライド扉は電源が落ちる前にロックされ無かったのか施錠が解除されており、多少の力で簡単に開く事が出来たので容易に侵入を果たす。一応、声を掛けてみたが反応は一切無い。
室内の明かりは点いておらず壁には窓と言った外と繋がる物が無い為、入口から入る光だけが部屋中を照らしている。だが、ヘルメットの視覚補助機能で中を伺う事は出来た。
室内は元の世界の事務所と似た様な内装をしており、入って直ぐに受付をするカウンターが此処で客商売をしている唯一の証拠と言った感じだった。
そのカウンターには現金商売なのか、日本でも見たようなトレーが置かれており、売りに来ただけの奴は、此処で所在なく突っ立っているしか無いのだろう。
「警告、軽度の汚染を感知。ヘルメットを外さないで下さい。」
「了解。誰もすき好んで咳き込みたく無いよな。」
ガスから嫌な警告が伝えられるが、ヘルメットには大量の埃を検知と表示されており気が抜けたので軽口で返す。道中、話していて気付いたが、彼は意外とウィットに富んでいる。
「スマホを扉の横に有るコントロールパネルに近づけて下さい。」
「わかったよ。ほら、これで良いか。」
スマホをパネルに近付けると、外部カメラらしき所から青いレーザーが発せられ、パネルの一カ所に当たる。
「サブジェネレーターを検知。施設を強制再稼働させます。」
「頼んだよ。」
ガスに返答すると、何処からか機械の稼働音が鳴り響くと小屋に明かりが灯った。
コントロールパネルにはモニターも備わっており、施設全体の簡略図が表示されており、そこにはエネルギーが施設中に行き渡っている事が示されていた。
「ガス、施設全体の様子は、どうだ?」
「内部に生体反応なし。ジャンクは、置き場と加工施設にそのままの様です。食糧庫は引き払われていますが、緊急備蓄がこの施設内に貯蔵されています。」
ガスは、音声による返答と同時にヘルメットへ施設全体の状況を表示してくれた。写真と図面で表示されたそれは、非常に分かりやすい。
どうやら、持ち主は急な夜逃げをした様で、金庫は開いたままで金品等は無く、施設内部に大量のジャンクと僅かな食糧品が残っている様だ。
「施設の防犯機能は、利用出来そうか?」
「現在、再設定を実施しています。少々お待ち下さい。再設定及び再起動いたしました。空気の循環及び、施設内の清掃を始めます。」
ガスに確認すると、防犯装置の再利用以外にも施設内の清掃も行う様で辺りからエアコンの稼働音の様な物が聞こえ始めた。
防犯装置は内外を問わない監視カメラや防犯ブザー以外にも有る様で、施設全体を囲う様に立っていたポールへエネルギーを送り始めた事が表示される。何の為のエネルギーか分らずに外のライブ映像を見ていると、ポール間に幾筋もの電流が走った。
「これで、ゆっくり出来るな。家主が出って行った理由にも因るが。」
「監視映像の記録は、物理的に破壊されています。また、施設内を物色した形跡があります。」
ヘルメットの画面にはガスの言葉と共に、複数の弾痕がある機械と物が散乱した施設内部が映った。
どうやら倉庫らしき建物では、買取したジャンク貯蔵以外にも修理や加工を行っていた様だが、換金できそうな物を取られた様子が無いので、やったのは強盗や借金取りと言ったごろつきでは無いのだろう。
「ガス、常に外部の監視を頼む。」
「お任せください。」
神が望みそうな厄介事に首を突っ込みそうな予感を感じながら、ソファに座り込む。
意外と柔らかい座り心地のソファにかなり癒されつつ、このまま寝てしまいたい願望を押し留めて、メニュー画面を確認する。そろそろ、スキルを確認して見たかったからだ。
「おっ。チャレンジの所にクリアの表示がある。先に確認してみるか。」
「チャレンジ機能を表示します。」
チャレンジ機能を開くと、サバイバル、戦闘、その他と三つに分かれており、その他以外の内容は、予想が付く。
クリアの表記はサバイバルとその他の所についており、何となく内容が察せられるサバイバルから詳しく確認してみる。
サバイバル内には、複数の項目が表示されていたが、二つの項目以外はハテナの羅列で項目が書かれており、確認できなかった。
日本語で表記されている項目は、【生存時間:1時間】と【仮拠点の入手】と書かれており、この2つは他の項目と色も違った。
達成箇所を詳しく見ると、総生存時間:1時間と言う内容と報酬欄に1SPと記されているだけだった。
仮拠点の方には、安全に寝泊り出来る一時拠点の入手と3SPの表記が有った。
恐らく、SPはスキルポイントの略で、スキルの入手や強化に必要となって来るのだと予想出来る。
生存時間の項目は他にも存在する様で、新たな項目が出来ていた。
サバイバルの項目を確認し終えると、次にその他へと取り掛かる。
その他では、マップ機能の入手の項目だけが変色し内容が読める様に成っていた。
中の説明も項目名そのままで、入手難易度も高く無いのか、報酬も1SPだけだった。
チャレンジの確認を終えた俺は、次にスキル機能の方を確認して行く事にした。
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