第2話「ガス、常に外部の監視を頼む」

 上空から目と頭皮を焼く太陽光が降り注ぎ、足を取られる砂、それが織りなす激しい高低差、喉を干上がらせる乾燥とこの砂漠は、人間に対して過酷だと言える。

 そんな中、目標地点の人工物へ無事に辿り着けたのは、ガスとスーツのお陰と言えるだろう。


 人生初の雄大な青空と広大な砂漠の景色は、少し落ち着いたお陰で堪能する事が出来たが、現代のネット環境に浸かり切った俺には、直ぐに見飽きてしまう物だった。

 景色に飽きた俺は、手に握りしめた物が何だったのか思い出したので、先ず手近な物であるスーツやスマホについて、ガスに説明を求めた。


 ガスによるとこのスーツには、高度なサバイバル能力と機能拡張能力を有しており、スキルの取得と資材の投入で能力の追加と強化が出来るそうだ。

 強化や追加無しで使える機能として、スーツの各所に装備品を取り付けるフリーマウント機能とサバイバル用ヘルメットの展開機能が有った。


 ヘルメットを展開すると、頭部も太陽光と乾燥した空気から守られる上、その内側がディスプレイとして機能している。

 マウント機能を使いスマホを二の腕に固定すると、その機能をディスプレイとリンクさせる事が出来た。


 早速、機能を試してみると、先程までマップを確認する為に何度も手元のスマホを見ていたが、目の前に表示される様に成ったお陰でその必要が無くなった。

 更に細かな操作を音声認識や視線に空中投影キーボードで出来る様に成った。


 機能の把握や操作の練習を夢中で行っている内にSF版プレハブ小屋と言った感じの建物に辿り着いたのだった。

 

 大小のプレハブ小屋とヘリポートの様な物が併設されたその場所は、建っている看板を見る限り、廃品回収屋らしい。

 ガスによると、此処は店舗登録の無い違法な施設で今は持ち主も居ない為、放棄されている様だ。

 暫く歩き詰めで疲れていたので早速、小さい店舗らしきプレハブ小屋へ侵入する事にした。


 小屋の扉は不用心にも施錠されておらず、簡単に侵入する事が出来た。

 小屋には窓が無く、入口から入る光だけだったが、中を伺う事は出来た。

 店舗と言うより事務所と言った内装をしており、入って直ぐに受付をするカウンターが此処で客商売をしている唯一の証拠と言った感じだった。

 そのカウンターには現金商売なのか、日本でも見たようなトレーが置かれており、売りに来ただけの奴は、此処で所在なく突っ立っているしか無いのだろう。


「警告、軽度の汚染を感知。ヘルメットを外さないで下さい。」

「了解。少なくてもホコリがヤバいな。」


 ガスから嫌な警告が伝えられるが、ヘルメットには大量の埃を検知と表示されており、気が抜けた。


「スマホを扉の横に有るコントロールパネルに近づけて下さい。」

「わかったよ。ほら、これで良いか。」


 スマホをパネルに近付けると、外部カメラらしき所から青いレーザーが発せられ、パネルの一カ所に当たる。


「サブジェネレーターを検知。施設を強制再稼働させます。」

「頼んだよ。」


 ガスに返答すると、何処からか機械の稼働音が鳴り響くと小屋に明かりが灯った。

 コントロールパネルにはモニターも備わっており、施設全体の簡略図が表示されており、そこにはエネルギーが施設中に行き渡っている事が示されていた。


「ガス、施設全体の様子は、どうだ?」

「内部に生体反応なし。ジャンクは、置き場と加工施設にそのままの様です。食糧庫は引き払われていますが、緊急備蓄がこの施設内に貯蔵されています。」


 ガスは、音声による返答と同時にヘルメットへ施設全体の状況を表示してくれた。

 どうやら、持ち主は急な夜逃げをした様で、金庫は開いたままで金品等は無く、施設内部に大量のジャンクと僅かな食糧品が残っている様だ。

 

「施設の防犯機能は、利用出来そうか?」

「現在、再設定を実施しています。少々お待ち下さい。再設定及び再起動いたしました。空気の循環及び、施設内の清掃を始めます。」


 ガスに確認すると、防犯装置の再利用以外にも施設内の清掃も行う様で辺りからエアコンの稼働音の様な物が聞こえ始めた。

 防犯装置は、内外を問わない監視カメラや防犯ブザー以外にも有る様で、施設全体を囲う様にポールが立ち上がり、その間に電流が走った。


「これで、ゆっくり出来るな。家主が出って行った理由にも因るが。」

「監視映像の記録は、物理的に破壊されています。また、施設内を物色した形跡があります。」


 ヘルメットの画面にはガスの言葉と共に、複数の弾痕がある機械と物が散乱した施設内部が映った。

 どうやら、大きい方のプレハブは買取したジャンクの修理や加工を行っていた様だが、換金できそうな物を取られた様子が無いので、やったのは強盗や借金取りと言ったごろつきでは無いのだろう。


「ガス、常に外部の監視を頼む。」

「お任せください。」


 神が望みそうな厄介事に首を突っ込みそうな予感を感じながら、ソファに座り込む。

 意外と柔らかい座り心地のソファにかなり癒されつつ、このまま寝てしまいたい願望を押し留めて、メニュー画面を確認する。そろそろ、スキルを確認して見たかったからだ。


「おっ。チャレンジの所にクリアの表示がある。先に確認してみるか。」

「チャレンジ機能を表示します。」


 チャレンジ機能を開くと、サバイバル、戦闘、その他と三つに分かれており、その他以外の内容は、予想が付く。

 クリアの表記はサバイバルとその他の所についており、何となく内容が察せられるサバイバルから詳しく確認してみる。


 サバイバル内には、複数の項目が表示されていたが、二つの項目以外はハテナの羅列で項目が書かれており、確認できなかった。

 日本語で表記されている項目は、【生存時間:1時間】と【仮拠点の入手】と書かれており、この2つは他の項目と色も違った。

 

 達成箇所を詳しく見ると、総生存時間:1時間と言う内容と報酬欄に1SPと記されているだけだった。

 仮拠点の方には、安全に寝泊り出来る一時拠点の入手と3SPの表記が有った。

 恐らく、SPはスキルポイントの略で、スキルの入手や強化に必要となって来るのだと予想出来る。

 生存時間の項目は他にも存在する様で、新たな項目が出来ていた。


 サバイバルの項目を確認し終えると、次にその他へと取り掛かる。

 その他では、マップ機能の入手の項目だけが変色し内容が読める様に成っていた。   

 中の説明も項目名そのままで、入手難易度も高く無いのか、報酬も1SPだけだった。

 

 チャレンジの確認を終えた俺は、次にスキル機能の方を確認して行く事にした。

 

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