異世界の銀河で何でも屋稼業
アキラ
第1話「取りあえず、ジョンで」
二重に輝く太陽が周囲を焼き尽くさんと輝き、砂と岩で構成された大地に生き物の生存を拒絶している。
静粛と熱さを超えた痛みを顔に感じながら、立ち尽くす俺の頭に思い浮かぶ言葉は、一つだけだった。
「何処だココ?」
熱さで朦朧とする頭を必死で働かせても、最後の記憶は自宅のベットでスマホを弄りながら寝落ちしまいと夜更かしをしていた所までだった。
そう、日本の自宅に居たはずの俺は、気付くと辺り一面を砂に囲まれた知らない星に居たのだ。
「どうなってんだ。何だこれ。」
サンサンを通り越してギラギラとレーザーの様に肌を焼き付ける太陽光の下に居る割に顔以外で暑さを感じない事を疑問に思って身体を見ると、SFチックな黒いスーツに身を包んでいた。
結構タイトなデザインのせいで気恥ずかしくなるが、辺りには人どころか生き物も居ない。
自身の姿に困惑していると、足元に謎の端末が落ちている事に気付いたので拾ってみる。
端末は、スマホの様に液晶パネルと黒い外装にカメラと側面のボタンで構成されていた。
唯一弄れそうな側面のボタンを押してみると、スマホが反応して画面に光が灯る。
起動した画面に表示されたOSは、GODroidと表記されていた。
生まれてから一度も聞いた事が無い物で不安に成るが、現状のヒントは手の中にある此れだけだ。
謎スマホのホーム画面には、聞いた事も無いアプリとカメラアプリしかなかったので、仕方なく謎アプリを開いてみる。
謎アプリが立ち上がると、インカメラと思っていた所から光が走り、青いレーザー光が頭頂から足先まで順に照らした。
それは、正しく精査やスキャンと呼ばれる様な物で、いきなりの事に慌てた俺は、手からスマホを落としてしまう。
「こんにちは。私は成長及び栄達並びに生存の無条件支援AI、通称
落としたスマホから男性系の機械音声で、上記の内容を伝えられた俺は、未だに現実の事と思えないままにゲームで愛用する名前を名乗った。
「取りあえず、ジョンで。」
「ジョン様ですね。神からのメッセージをお伝え致します。画面を上に向けて下さい。」
「はいはい。こうですかっと。」
「投影いたします。」
謎の状況に謎のスマホと頭が混乱するしか無い状況の中、取り敢えず声の指示を聞く事にした。
砂の上で熱されるスマホの画面を上に向けると、インカメラらしき所がまたも輝き、光の粒が空中で留まる。
それは、次第にパソコン画面に表示されるウィンドウの様な物を空中に形作り、ローマ字でリプレイと表示した。
「どうも、どうも、転移者くん。この音声を聞いていると言う事は、無事に異世界の生存可能惑星に転移出来たようだね。」
「まず初めに、君は地球の自室から拉致られて、スペースファンタジーやスペースオペラなんて呼ばれる世界に居るよ。」
ホログラム映像から男性とも女性とも言えない声が、流れ出した。
こちらを喋り倒す勢いで発せられる内容に、頭が痛くなりながら黙って聞き続ける。
「君を拉致してこの世界に連れて来たのは、この世界で生きる君の姿を見て楽しませて貰うためだよ。だから君は、気の向くままに生きてね。」
「なんでやねん。」
ホログラムから、俺の転移理由が見世物であると伝えられて、怒りとも悲しみとも言えない言語化し難い感情が渦巻く。
そんな俺を無視して音声は、流れ続けた。
「君がこの世界で生きて行く上で、必要に成りそうな最低限の物を支給したよ。内容に付いては、この端末を見てね。」
「服とスマホだけでどないせいって言うねん。」
仕事の都合上意識して敬語を使っていたが、精神的余裕の無さにより、それを維持出来ず、方言が出てきてしまう。
「君には、追加の支援として、クエスト機能とチャレンジ機能にスキル機能を付けといたよ。ガスから確認できるから、活用して生き残って冒険してね。」
「ゲームかよ。まぁ、神からしてみたら配信サイトの実況プレイでも見てるみたいなもんか。」
音声の再生が無慈悲に終わり、スキルやクエスト、チャレンジとゲーム内のメニュー画面の様な物が、ホログラムで映し出された。
「えーと、ガスで良いのかな。君に今から質問をして行くけど良いか?」
「答えられる範囲でお答え致します。」
突然の事に頭がマヒする中、命綱と言っても良い存在の支援AIに質問をぶつけて行くことにした。
ガスは、平坦な機械音声で是と返答してくれたので、頭に浮かんだ質問をぶつける事にした。
「よし。この星に人間と同じ様な栄養と水分が、必要な知的生命体の拠点や居住区はあるか?」
「はい。この星には、知的生命体が運営している宇宙港や採鉱施設等が存在します。また、原住種族の居住地も転々と存在しています。」
「じゃあ、周囲に無人かつ使用可能な人工建造物もしくは、友好的な有人の都市は有るか?」
「ユーザーより、周辺の詳細検索要求が行われました。マップアプリを開放します。此方をご覧ください。」
ガスがそう言うと、ホログラムの画面が変わり、中心に三角形のマークが浮かび、赤い斑模様と角に方角を示すコンパスに光点だけのマップらしき物が映し出された。
「ご質問に沿う地点を幾つかマップに表示いたしました。無人の所を緑、有人の所を青で示しています。また、危険地帯と予測できる地点は、赤く表示しています。」
「滅茶苦茶、便利だな。ありがとう。」
太陽光を存分に浴びた砂の上で、熱されていたスマホを拾い上げると、スーツのお陰か謎スマホの機能なのか熱くは無かった。
大きく空中に投影されていたホログラムは、持ち上げると小さくなり、顔を突っ込む様な事は無かった。
「そうだ、危険地帯を避けて光点に行く為の最短ルートを表示してくれるか?」
「畏まりました。」
ガスが、短く答えるとマップ画面に曲がりくねった点線が引かれたので、それに従って移動を開始した。
この灼熱地獄の中、水も日陰も遮蔽物も無い場所に何時までも居られないからだ。
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