ヤンデレ気味な幼馴染の異世界召喚に巻き込まれたが、私だけ言語が通じない
シャルねる
第1話
小笠原結衣視点
私――小笠原結衣おがさわらゆいはいつも通りに朝ごはんを食べて家を出ると幼馴染のみーちゃん――瀬戸美玲せとみれいが私を待っていました。
「みーちゃん、おはよう」
私はみーちゃんに抱きついて挨拶をします。これもいつも通りの日常です。みーちゃんは私より背が高いから私が見上げる形になっちゃう……でもそうするとみーちゃんは私の頭を撫でてくれるから辞められないんです。
みーちゃんは優しい。それでいて同性の私もびっくりしちゃうぐらいの美人さんです。だから学校でも当然モテてるのにいつも私と一緒にいてくれます。
私は引っ込み思案で友達も出来ないので、みーちゃんがいてくれるのは嬉しいけど、迷惑になってないかが心配です。この前この話をみーちゃんにしたらそんな事ないと怒られました。
「結衣、学校遅刻するよ」
みーちゃんは私を撫でるのをやめると、私の手を掴んで歩きだしました。
今は私とみーちゃんの二人きりなので、私は思い切って昨日のことを相談することにしました。
「ねぇ、みーちゃんってさ、いっぱい告白されてるよね?」
「うん。それがどうかしたの?」
「えっとね、私も昨日告白されてね」
「…………は?」
私がそう言うとみーちゃんとは思えないほどの呆気に取られた声が帰ってきました。
「みーちゃん?」
「それで? 返事は?」
なんだかみーちゃんの声がさっきより怖い気がしますけど、多分気のせいです。
「ま、まだなんだ」
「そう。断って」
「え? ま、まだ誰から告白されたのかも教えてないよ?」
「付き合うつもりなの?」
「ちょ、ちょっといいかなって――」
私がそう言い終える前に、何か円の模様のようなものが大きい音を立てながらみーちゃんの足元に現れました。
私は訳が分からずに狼狽えていると、みーちゃんに咄嗟に抱き寄せられました。
【■■■■■■■■■■■■■■】
私はみーちゃんの体に顔を埋めて目を瞑っていたのですが、突然訳の分からない声が聞こえてきたので、みーちゃんの体に顔を埋めるのをやめて、辺りを見回そうとしたのですが、みーちゃんがさせてくれませんでした。
【■■■■■■■■■■■■■■■■■■■】
【■■■】
突然みーちゃんも私の知らない言語で話し出しました。
私は辺りが見えないので、あまり分かりませんが、多分いい雰囲気ではないと思います。
私は怖くなり、体が震えてきました。
怖い、怖いよ。
私が震えていると、頭に手を優しく置かれました。見えないけど、これはみーちゃんの手だって分かります。
【■■■■■】
また、知らない言語が聞こえてきたと思ったら、今度は驚くほどに静かになりました。
「結衣、ちゃんと目を閉じててね? もし開けちゃったらキスしちゃうから」
「あっ、んっ、き、きす?」
当然みーちゃんにそんなことを突然耳元で囁かれましたので、びっくりして変な声が出てしまいました。
じょ、冗談だとは分かってるんですが、恥ずかしくて顔が赤くなっていくのが分かります。
私はみーちゃんに顔を見られないように、腕に少しだけ力を入れてみーちゃんに顔を埋めます。
みーちゃんはそんな私をお姫様抱っこしてきました。
「み、みーちゃん!?」
「目、開けちゃだめだからね」
「う、うん」
怖い……けど、みーちゃんがいるので、頑張ろうと思います。
――――――――――――――――――――――――――
瀬戸美玲視点
今日も私は幼馴染の小笠原結衣と一緒に学校に行くために、家の前で待っている。
結衣は自覚していないけど、可愛い。だからこそ虫がすぐに寄り付く。だからこそちゃんと私が近くにいて、駆除しないと。
私がどうやって虫を処理するかを考えていると、結衣の家の扉が開いた。
「みーちゃん、おはよう」
そう言いながら結衣は私に抱きついてくる。
このまま押し倒してしまおうか? いっそ殺して結衣の最後に抱きついた人を私にしようか? と何度も考えたことがあるけど、まだ実行に移したことは無い。
「結衣、学校遅刻するよ」
本当は結衣を学校なんかに行かせないで、今すぐ私の家に監禁したい。けど、まだだめ。やるならちゃんと結衣の親を殺さないと。探されたりしたら面倒だし。
でも、結衣にバレたら嫌われちゃうよね……どうやったら結衣にバレずに殺れるんだろう。
「ねぇ、みーちゃんってさ、いっぱい告白されてるよね?」
私が結衣の親をどう殺すかを考えていたら、結衣がそんなことを聞いてきた。
私が結衣以外の人と付き合わないか心配してるの? だったら安心して。私は結衣以外は愛さないから。それ以外はどうでもいいから。
「うん。それがどうかしたの?」
「えっとね、私も昨日告白されてね」
「…………は?」
告白? 誰が? 誰が私の結衣を汚そうとしている? そもそも、いつ告白した? 私と結衣は四六時中一緒にいるはずだ。結衣は塾とかに行ってる訳でもないし、私と結衣の家族(仮)以外は連絡アプリだって交換していない。だったら学校にいる時のはずだ。……あれだけトラウマを植え付けたはずなのに、まだ結衣に近づこうとするゴミがいるとは……何時だ? いや、昨日は私が目を離した隙に結衣は先生に頼まれ事をして、一瞬、一瞬だけ私と結衣が離れている時間があった。その時か? だったら相手は先生? だとしたら社会的に殺しやすい。
「みーちゃん?」
「それで? 返事は?」
もし付き合ってたら殺そう。そいつも結衣も。あぁ、でもそいつは遠くで殺さないと、結衣の近くで死ぬのは私だ。
「ま、まだなんだ」
「そう。断って」
「え? ま、まだ誰から告白されたのかも教えてないよ?」
「付き合うつもりなの?」
「ちょ、ちょっといいかなって――」
何? この音。この音のせいで、結衣の最後の方の言葉が聞こえなかった。
私の足元だけ? なんで? 分からない。分からないけど、このままだと結衣と二度と会えない気がした。だから私は咄嗟に結衣を抱き寄せた。
辺りが眩しくなり、つい瞳を閉じ、開けた瞬間にはさっきまでいた場所とは違い、変な格好をした奴らに囲まれていた。
【聖女様の召喚に成功したぞ!】
聖女? 何を言っている? いや、違う。私だ。私が聖女なんだ。なんでかは分からないけど、こいつらの話す知らない言語も分かるし、私の持っている色々な力も分かる。そして、結衣にはこいつらの言語が通じていないことも。
結衣が私から離れようとしたので、私は結衣を抱き寄せる力を強する。
【聖女様、ささ、こちらへどうぞ。誰か、聖女様の近くにいるゴミを処分しておけ】
……ゴミ? なんだ? こいつは自己紹介でもしたのか? いや、私が聖女なんだから、こいつは私の近くには居ない。だったら、こいつは結衣の事をゴミって言ったのか? 私の結衣をゴミだと? ふざけているのか。
【殺すぞ】
今なら余裕で殺せる。どうやって殺してやろうか。
そう考えていると、結衣が震える気配が伝わってきた。
可愛い。私のさっきまでの気持ちが急激に癒されていくのがわかる。
私は結衣の頭に手を置く。
結衣のおかげで落ち着いた私はこのまま殺すと、血の匂いや音が結衣に届いてしまうので、結衣に周りの音が聞こえないように、魔法? を掛けた。そして、同様に匂いも届かないようにした。
【聖女様!?】
私はゴミの体を全て魔法で吹き飛ばし、血溜まりを作り出した。
これを結衣に見られるのはまずいよね。
「結衣、ちゃんと目を閉じててね? もし開けちゃったらキスしちゃうから」
私は結衣の耳元でそう言う。
「あっ、んっ、き、きす?」
待って、可愛すぎる。押し倒していいかな? いいよね。これはむしろ誘ってるよね。
いや、今はいいや。周りが汚いし、結衣は言語が通じない。だから私に頼るしかないし、私に依存するしかない。
ふふ、この世界なら誰にも邪魔されない。邪魔をされそうになっても、私の力があればすぐに消せる。
私はこんなゴミがいっぱい転がっているところから一刻も早く結衣を連れ出すために、お姫様抱っこをする。
これでびっくりして結衣が目を開けてくれたら本当にキスをしちゃおう。
「み、みーちゃん!?」
「目、開けちゃだめだからね」
「う、うん」
残念ながらびっくりしただけで、目は開けてくれなかったけど、耳まで赤くなっている結衣の顔は可愛かったのでよしとする。
結衣、どんどん私に依存して、私と二人でずっと一緒に暮らそうね。今はまだ無理だけど、魔法がある世界なんだし、子供だって作れるかもしれないから、ね。
ヤンデレ気味な幼馴染の異世界召喚に巻き込まれたが、私だけ言語が通じない シャルねる @neru3656
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