5. 昨十一月 / 大好き

男は女に気持ちを伝えた。だが女の離れた気持ちに変わりはなかった。会うことも叶わなかった。


男は自分の気持ちが高まっていると感じていた。女がメッセージの返信を滞らせると、男は女がパートナーと仲良くしていることを想像し嫉妬を覚えた。SNSで他の男との絡みもチェックしており、自分への返信の順番が低いことに気分を落とした。


男は女に何度もメッセージで自分の想いを伝え続けていた。女に依存されていたころに自分が応えていなかったことを伝えていた。好きだ、一緒にいたい、誰よりも優先する。それは今更でしかなかった。気持ちがなくなっていた女はそんな男からの想いに耐えられなかった。男に、重い、と言った。続いて、当時も本当の好きではなかった、と言い、所詮は不倫なのに、とも言った。


男はショックを受けたが気持ちが変わることはなかった。ただ仕事以外の時間は全て女が好きが故のネガティブな想像だった。日常的にため息をつき、涙ぐむこともあった。パートナーには職場環境が変わったことによる鬱だと嘘をついた。


そんな男が失意の中で女に言った。

「大好き、でも辛い」

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盾矛 アサイ @CrazyArrow

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