2. 昨八月 / 好きではない
昨年の八月、夏季休暇中の男は都内から和歌山に帰省をしていた。その後あるアーティストのライブが行われる大阪に向かっていた。男はSNSコミュニティで知り合った女と待ち合わせていた。女は都内から出てきていたが、土地勘がないため新大阪から共に行動するためだ。
二人はこれが初見というわけではない。SNSでは毎日のようにやり取りをし、都内のライブで何度も顔を合わせている。二人で飲みに行った際に、共に大阪への遠征に参加することが決まり、流れるようにツインのホテルを予約した。シングルをふた部屋とっても結局はどちらかの部屋に行って飲むのだから、安価にツインで済まそう、そういうことだった。言い出したのは女の方だ。
ライブが終わりホテルに入り、順番にシャワーを浴びたあと、コンビニで買った酒をのみ語り合い、午前二時にお互いそれぞれの布団に入った。女は人より体温が高く、冷房を強くしたため男を気遣った。男が少し寒いというと、女は温めようかといって男の布団に入っていった。二人は初めて関係を持ったのだが、このとき男は女の事が好きというわけではなかった。
そんな男が布団の中で女に言った。
「好きでもない人と、こんなことして良かったの?」
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