盾矛
アサイ
1. 一月 / 嫌い
男は女と一泊二日の旅行から帰ってきたところだった。車を女の家から1kmほど離れたスーパーの駐車場に停め、二人は今後について話し込んでいた。一月の初旬、フロントガラスもサイドガラスも曇っていて、感情的に言い争っていても周囲の人が不審に思うこともなかっただろう。
男と女の関係はやや複雑であった。それぞれ別のパートナーと共に暮らしていながら二人は親密な関係を持っていた。女が体を強く求め、男は流されるままに受け入れてきた。
ただ、三カ月前から女が求めることはなくなっていた。そして、男は旅行に行く前からもう会うのは今回で最後だと決めていた。なぜならこの女のことが嫌いだったからだ。関係が始まったころの女から大きく変わってしまった。すぐ怒る、男の気持ちを決めつける、自分のことを棚に上げる、論理的に話さない、タバコを吸い出した、敵意を感じる言葉づかい。今では見た目も性格も本来のパートナーに劣っていると考えていた。
そんな男が車中で女に言った。
「好き、だから離れたくない」
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