ナチス巨大戦車はハイブリッド車だった

いわのふ

ナチス巨大戦車はハイブリッド車だった

 第二次大戦がはじまったころ、ドイツには実は優秀な戦車を作る技術がなかった。


 優秀な戦車を作る技術は、チェコスロバキアにあり、開発したばかりの戦車をチェコはうまく活用もできずにナチスに併合されてしまった。


 ホントに初期のドイツ戦車はどうしようもなくて、ポーランド戦が電撃戦だといわれているが実態はそうではない(と書いてある文献と、電撃戦だと書いてある文献両方がある)。実際、主力戦車は一号、二号軽戦車であったので、航空爆撃と歩兵での侵略の成果である。フランス攻略向けの電撃戦用戦車主力はチェコから収奪した車両だったという話もある。まだ、三号、四号戦車は量産できていなかったためである。


 最初に実用化された中戦車、戦期を通して三号戦車は広く活用されはしたが、重戦車はおろか、米国の量産型M4中戦車(倒しても倒しても現れるガンダムのザクみたいなものだ)にも劣る性能であった。ソ連のT34も中戦車ではあるが、三号戦車の性能を大きく上回り、ドイツは焦った(というかヒトラーが焦ったのかもしれない)。T34がミンスク進撃の際に現れた時、ドイツは航空兵力と88ミリ対空兼対戦車砲を動員してつぶしにかかるほどで、性能には驚嘆した。T34シリーズは戦後に至るまで改良が施されて性能は向上していった。


 敵に勝つにはなんでも大きくしてしまえ、という発想は大艦巨砲主義にかかわらず、このころの発想で、ドイツの戦車はどんどん大型化し、ついにはティーガー重戦車まで登場するありさまであった。ティーガーはトランスミッションに問題があり機動性がわるかったが、これに懲りず、ティーガーII(キング・ティーガーともケーニヒス・ティーガーともよばれる)を投入した。もっとも、ティーガーは米英軍や赤軍にとって、非常に脅威であったようで、心理的作戦としてはうまくいった方だと思う。


 それでもまだ足りない、とヒトラーがいうので超巨大戦車、マウスやエレファントが開発された。これにはアルベルト・シュペーア軍需相が大反対だったようで(当たり前だ)、シュペーアは終戦前年に武器生産量を戦期最大にするほどの優れた人で、こんなものダメだと思ったのだろう。


 100トン級のマウス開発はさんざんてこずった挙句に、これはどうやら内燃機関とドイツのトランスミッションでは、どうにもなるものではないということになった。で、ガソリンエンジンで発電して初動トルクの大きなモーターを搭載することになったのである。実際には数両(後日、調べたところ二両)しか生産されなかったようだが、ゲームでは一両だけ登場し、のろのろと動いては撃破される姿が再現されている(モスクワ・トゥー・ベルリン~ドイツ軍最期の戦い~、Zoo社より発売。Win11でも動作するが、Zoo社は倒産して現在は中古品を買うか、ダウンロード購買権を持っている人だけがプレイできる)。


 いま、自分は日産の初代e-powerノートに乗っているが、こういう発想は昔からあったのだな、と感慨深かったわけである。いや、ディーゼル・エレクトリックが列車に使われてるとかは知ってたが、1940年代にはそういうこと考えてた人がいたということが驚きだった。で、日産e-powerはEV並みのモーターを搭載しているため、初動トルクの大きさは確かにすごくて、到底排気量からは想像できないほどの加速性能が出るし小気味良くカーブを旋回、減速、再加速できるので、わりと面白い乗り味である。


 なのではあるが、モーターは長時間高負荷をかけ続けるという動作に内燃機関に比較して弱いため、高速道路では燃費が冴えないし、加速もそんなに良くはない。なので、他社はあんまりまねしないみたいである。しかしながら、ルーツがWWIIのドイツにあったとは、ちょっと驚いた。まあ、潜水艦のことを言い出せば、WWII当初からディーゼル・エレクトリックで、現在でも海上自衛隊では主力なので何とも言えないが。

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