部屋の前で

 ボビンレースの時のように、私は走って家に帰った。そして階段を登りながら、ミミミが起きていることもわかった。


「旅から本当に急に帰ったから、すごくお腹がすいているんだ。もしお母さんが階段にやって来たら「誰かお菓子を食べている」ってわかるくらいだもん」

心配なほどお菓子の匂いでいっぱいの部屋に私は入っていった。


「おかえり糸ちゃん、僕食べすぎかなあ」

冗談のようなミミミの言葉に

「ごめんね、ミミミ・・・・・私のわがままで」

「わがままとはちょっと違うね、糸ちゃん。糸ちゃんは本当に・・・

読んだんだね、織物の本を。きっと書いた人は喜んでいるよ、糸ちゃんがすぐにわかってくれて」

「うん・・・布を作るって、本当に大変なんだね・・・機織りの機械に糸かけるのを一カ所間違っただけで、出来なくなるって」

「そうなんだよね。機を織るのはむしろ簡単とまで言われる位なんだよ。もちろんものすごく大変な織物もあるから、全部では無いけれど」

「私・・・おばあさんに謝らなきゃ」

「そう、じゃあまた行くんだね」

「うん! よろしくね、ミミミ」

「もちろんだよ。でもどうしよう、糸ちゃんは今回人間なんだよね。

服はどうしたらいいかな、寝間着じゃね・・・」

「それはちょっと考えているの! 」

「ぜひ聞かせて! でももうちょっと食べてから」


二人で大切な相談をした。


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