いろんな先生

 私はいつもとは違った。部屋に戻った事はわかったけれど目がさえて、全く眠たくも無かった。


「糸ちゃん」


いつものミミミの声では無かった。私をどこか叱るような感じだったので、

「だって私初めてなのよ! 何なのあのおばあさん! 大変だったのはわかるけど、鬼婆みたい!! 」

「糸ちゃん、ちょっと静かに」

1年生の頃に、全く同じ言葉で、担任の先生に叱られた事も思い出した。


「糸ちゃん、図書館か学校で、布を織る本を読んで。確かにあの女の人はイライラしていただろうけれど、そうなる気持ちがすぐにわかるから。じゃあおやすみ」


 いつものようにコロンとマスコットに戻ってしまった。


「何よ! みんな私が悪いの! 」

小声でブツブツ言いながら、眠れないかと思ったら、案外そうでも無かった。


休みの日に、私は図書館には行かなかった。


「どうした糸、今日はえらく不機嫌だな」

お父さんから言われたけれど、「別に」と答えて、ぼんやりと過ごした。部屋に戻ったらミミミに叱られそうな気がしたし、何だか居場所がないような気がしたまま、月曜日を迎えた。


一方、京子ちゃんも朝、本当に疲れた感じだった。想像していた通り

「糸ちゃん、私のせいで試合に負けたかも」とぽつりと言ったので、私はずっと励まし続けていた。サッカーのとき何度もそんな経験はあったからだ。

「そうよね、糸ちゃんの方がきっと何倍も大変だったわよね、サッカーは点を取るのが難しいし」

「それは競技によって違うよ京子ちゃん、負けるときもあるよ、スポーツだもん」

「そうよね」

学校に着く頃には、京子ちゃんも、ちょっと笑顔になってくれた。

それを見たからだろうか、やっと素直に「織物の本を読んでみよう」という気持ちになった。

 

そして、ほんの数ページ読んだだけで、私は帰ってすぐ、まずミミミに、そしておばあさんにも心から謝らなければいけないと思った。

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