おばあさんの願い
「おや、何かしょんぼりしとるの、言い過ぎたか。ハハハ、お前さんは賢いの。ほら、そんな顔せんと、次の小屋も見せてやるから」
おばあさんはウキウキした感じで別の小屋に行った。
「ほら、ご覧、すごいじゃろ。この辺りでこんなにたくさん藍のカメをもっとるものはおらん」
私が部屋をのぞくと、土の中にカメが埋まっている。夏休み、藍染めの工房でみたものと同じだった。
「あん人が若くして死んでから、昼は畑、夜は機織りじゃった・・・息子が大きくなってわしのため小屋を建ててくれた。川もあるから、機を織るのにちょうど湿り気もある。ちょうど良い塩梅
じゃったのに・・・・目がこれでは・・・・・」
おばあさんはしゃがみこみ、空になって、藍の色が残っている壺を悲しそうに見つめた。
私はしばらく部屋にいたけれど、おばあさんを残して外に出た。
「ミミミ・・・・・あのおばあさんも目が悪いんだね、アンヌおばあちゃんと一緒だ、それにきっと若い頃に旦那さんが亡くなったんだ、すごく苦労したんだね」
「そうだね、でも目はアンヌおばあちゃんほどひどくなさそうだ、まあ老眼だろうね」
「じゃあ老眼鏡があればいいかな! 百均でもあるし!!!」
「それは出来ないよ、糸ちゃん」
「うん、そうだね・・・・・」
おばあさんはずっと小屋から出てこなかった。
外にいても大きなため息が聞こえる。
「どうしよう、アンヌおばあちゃんみたいにレーズが仕上げられるまで、という訳にもいかない。でもおばあさん、かわいそう」
二人で話していると、おばあさんが「ヤレヤレうるさいの、タカでもおったか」と小屋から出てきた途端
「あ!! 」
と大きな声をあげ、ものすごく驚いた顔で私を見ている。どうしたのかと思ったら、私の周りにキラキラ光るものがある、細い細い糸。
「え! これってミミミの糸??? 」
魔法の糸が私を取り囲んでいる。
「どうなっているの? 」
とミミミに聞いたけれど返事も姿もない。でも何が起こっているかはわかった。体がさっきより数段重くなって、足もしっかり地面に立っている。さっきまで翼だった所は、手になっている。
「私、人間に戻っているの???? 」
しかも半袖半ズボンのパジャマ姿のままだ。でもなぜか靴は履いている。
そうしておばあさん目が合った。
「ああ! 神様!!! 願いを叶えて下さった!! あの子を生き返らせて下さった、ほんの何日かだけでも!!! 」
おばあさんの潤んだ瞳が、とてもきれいだった。
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