妙な後悔
「ああ! やはりあなたは神の羊、今日わざわざここに来て下さったのがその証拠です」
その言葉に、むしろ島の人達の方が「信じられない」という顔をしていた。
「ああ、神の羊、小さなあなたが起こして下さった奇跡を、私は一生、決して忘れません。本当にありがとうございます」
と言って抱きしめた後、
私の・・・羊の口にキスをした。
それを見て「ワハハハハ」「キャハハハ」と子供達の笑い声が響いたけれど、私の所には次々にスペインの人がやって来て、みんな同じ事をし始めた。
「ありがとうございます」「私もあなたを信じます」
「本当に神の羊だ」「ああ、これで女房と子どものところに帰れます」
みんな感謝の言葉を言いながらそうしてくれるのはいいけれど・・・・
何せ・・・・・・・・
きっと百人くらいそうしただろう、
わたしはもうさすがに耐えきれず
「ごめんなさい!! もう無理!! 」といいながらその場から飛び退いた。すると私とキスするはずだった男の人が
「え! どうして僕の時だけ!!! 」
と言うと、港にいた人全員が大笑いをし始めた。
「お前を振る女が世の中にはいるって事だよ! ハハハハハ!! 」
よく見るとその男の人は若くて、すごく格好良くて、まるで外国映画の俳優さんの様だった。
「あー」と私が思わず言うと
「ほら、神の羊も「そうだ」と言っているぞ!! 」
港は一層楽しい場所になった。
「さあ、そろそろ出発しよう」
船団長はそう言って、あらためて島の人達にお礼を言い、スペインの人達は小舟で帆船へと向かいはじめた。
最後の船には、あの男の人が乗って、見えなくなるまで、大きく手を振って、お礼の言葉を言ってくれた。
でも私の周りには島の子供達がたくさんいて
「本当に神の羊なの? 」と質問しはじめた。
体の中に手を入れる子どももいたので、私はミミミがいるのがわかってしまうと思い、一目散に元来た道を走り始めた。何人かの子どもは付いてきたけれど
「こんなに足の速い羊っているんだ! 」と幸運にも途中であきらめてくれた。
海を見ると、船はどんどん遠ざかって、あっという間に水平線の向こうに消えてしまった。
「ミミミ、ミミミ大丈夫だった? 」
「うん、糸ちゃんありがとう。今回もがんばったね、糸ちゃん」
「そうかな、でもフェアアイルセーターは見ることが出来なかったけど。あ! そういえば十字、あのミトンも十字だったね、旗と同じ模様だったのかな」
「アルマダクロスだよ」
「アルマダクロス? 」
「あの模様はそうよばれているんだ。アルマダというのはスペイン語で海軍と・・・・・」
ミミミの声で安心したのか、私はそのまま眠ってしまった。そして朝目が覚めると
「糸ちゃん、体は大丈夫? 」
「うん、熱も何もないみたい。ありがとうミミミ、おやすみなさい」
「おやすみ糸ちゃん」
「そうか・・・模様にも名前がある、いろんな歴史もあるんだ」
でも今度の旅はそれだけでは終わらなかった。
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