お医者さんロボット

私はそのロボットがとてもきれいに作られているのに驚いた。

空き缶をそのまま使っているわけじゃなくて、一度完全に平たくつぶして、それを重ねて作っているのがわかった。腕も胸も空き缶の層になっていて、そうすることで、体の部分の太さを自在に変えている。空き缶は私が見たことのあるものはほんの少しだけだったので、きっと海外で作られているものだろう。指はミトンのようになっているけれど、ほんのちょっとだけ曲がって、本物の人間の手のようだ。

「わあ・・・すごい・・・」

私は自然にロボットに触れようとすると

「ああ、肩の部分は止めた方がいい、指が切れてしまうかもしれない。まだ少し鋭い部分があってね、徐々に補修中なんだ」

「あ、じゃああなたも私と同じで子どもが作った物なの? 」

「そう」

「すごい・・・・」

「彼のお父さんが同じようなものを作っているんだ、直接教えてもらうことも出来るから」

そう言って彼はぴょんと飛んで、私のおでこに手を当てた。冷たい金属の手がとても気持ちよかった。

「熱も下がっているようだね、もう大丈夫だと思うよ。後は水分をとってしっかり食べて治すことだ」

「はい」

「じゃあ、私は帰るけれど、糸ちゃん、自分の体のことはキチンとミミミ君に言っておかないといけないよ。無理をしたら、結局旅が出来なくなってしまうのだから」

「はい」

そう返事をするやいなや、お父さんとお母さんの部屋から音がしたので、私は急いで寝たふりをして、ミミミも私の枕元で元に戻った。


「糸? 」

「寝ている? 」

「寝言? 」

そうしてお母さんとお父さんの手が私の額に代わる代わる伸びた。

「熱は下がっているみたいね」

「熱でのうわごとじゃなかったのかな・・・」

「とにかく、寝言はいつもミミミちゃんのことね」

「病気が治ってきているんだろう」

ゆっくりと静かに二人は部屋を出て行った。しばらくして、私はミミミに小さな声で聞いた。

「あの人が・・・ミミミよりも偉い人? 」

「うん、そう。それに元々お医者さんだったからね、ちょうど良かった」

「ごめんなさい・・・ワカメのこと隠していて」

「いいんだよ、でもこの次からは気をつけようね、僕も反省したよ、ごめんね、さあ、眠って治そう、糸ちゃん」

「うん、ミミミ、おやすみなさい。すごいなあ私と同じくらいの年で、あんなのが作れるなんて・・・・」

まだあの小さな、冷たい手の感触が残ったままだった。


そして朝になる頃に、今度はフエルトの手が同じ所に触れた。


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