病気とロボット

 熱はなかなか下がらなかった。検査をしたけれど、インフルエンザでもコロナでもなくて、お医者さんもちょっと困っていた。

良くなるかなと思ったらまた熱が上がって、ということが一週間くらい続いた。

「ごめんね、糸ちゃん、寒かったんだろう? 」

「違うよ、ミミミ、大丈夫だから」

そう答えたけれど、心の中ではワカメの事が気になっていた。

「私はワカメが食べられないけれど、でもあの羊は大好きだった。

体は羊なんだから、それはどうなるんだろう」

もちろんお母さんはお医者さんにワカメの事を話したけれど、「何週間か前の話だから、それは今回の熱とは直接関係が無いでしょう」と言われていた。

でも真実は直前にも食べている。


「お水はしっかり飲んでね、糸ちゃん」

「ありがとう、ミミミ。ミミミは病気にならないの?

私のがうつったりしないの? 」

「それは大丈夫みたいだけど。僕がいたらゆっくり出来ないかな? 」

「ううん、いてくれた方がいい・・・」

もしかしたら、フェア島で、ずっと寝たままの人もいるかもと思った。

「海は寒かったでしょうね、病気になっても薬局もないし、昔は本当に大変だったんだ、あの時の人達に比べたら、私は大丈夫。ミミミ」

「糸ちゃんは偉いね」

少しずつだけれど、病気は治ってきてはいた。




そして、その晩の事だった。

部屋で何か音がする。金属同士の立てる音のようだけれど、私はぼんやりとしていた。すると声が聞こえてきた。


「この前の注意を全然聞いていない、君と久重を組ませたのは失敗だったか。君達二人はこの子に「旅の競争」をさせているのかね。

ボビンレースでは予想もしない事がおき、なんとか解決したが、その後は第二次大戦中。今度は酷暑の日本からフェアアイルなんて、成長期の女の子の心と体に無理がいくに決まっているだろう? ちょっと考えたまえ」


小さな、聞いたことのない声がした。

「あれ、私、旅をしていたっけ? でもフェア島の人の声じゃない気がする」私は旅の目覚めのような感じで聞いていた。

「はい・・・申し訳ありません。で、どうでしょうか? 発熱の原因が検査でもはっきりつかめていなくて」

これは間違いなくミミミの声だった。

「検査でわかるのは主要なウイルス、細菌だから・・・私も正直なところわからない。熱は徐々に下がってきているのか? 」

「ええ、徐々にですが」

「それよりも、旅の前に体調の異常はなかったのかな? 」

「すいません・・・・・ちょっと出ておりました」

「どういうことだね? 旅の前の体調を「観察しておかなければいけない」というのはもっとも大事だ、全ては君の責任だぞ」

「ハイ・・・すいません・・・・・」

「どうしたんだ、そんなミスは今までなかっただろうに、その上・・・」


やっとはっきりわかった。ミミミが誰かに叱られている、しかも私のことで。

「違うの!! 」私は飛び起きて言った。

「ミミミは悪くないの、私がだまっておいたからいけないの! 本当は給食でワカメを食べてお腹がいたくなっていたのをミミミに隠していたの。どうしても、どうしてもフェア島に行きたくて」

そうしてベッドの足の方にある机の上を見た。そこにはミミミとミミミの二倍くらいの大きさの

「え・・・ロボット? 空き缶で作ってあるの? 」

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