やさしい羊

どこの家も、様子は似通っていた。ただやっぱりあの、私を神の羊と言った男の人は、遠くから私の所へ走ってやって来た。

「神の羊、見に来てくださったのですね。みんな本当に元気になりました、ありがとうございます」

「それは島の人達がやってくれたことだから・・・」

と言った言葉はもちろん「メーメーメー」となってしまい

「ああ、本当にありがとうございます。この前あなたにお会いしたときは、あなたはすぐに逃げておしまいになった。きっと神の宿る時があるのだと思うのです、違いますか?」

「メー」

「ああ、やはりそうですよね! 」

あんまりこの人の側にいると、ミミミの事がわかってしまうかもしれないので、私は先に向かった。


「この下に港があるんだね」

小舟が何艘もつないであって、網も干してあった。

「ここが一番大きな集落のようだね」

今度は坂を下って、石造りの建物が並んだ所を歩いた。

「なんだか、一番最初に行った、ボビンレースの美術館みたい」

「そうだね、木の建物は少ないよね」

二人で話していると、前から男の人がやって来た。

「あの人、船団長だよ」ミミミはそう言ったけれど、私は良く覚えていなかった。すると男の人はまっすぐに私の所にやって来て

映画の騎士のように、私の前に片膝をついた。

「ああ、我々を見に来て下さったのですか、本当にありがとうございます、あなたのおかげで、私達は命を救われ、島の人にも受け入れられました、正直、初めはあなたが神の羊とは信じられませんでした。でも今日のあなたは、島を見回り、私達の安否を確認してくださっている、他の仲間からも聞きました。ありがとうございます」

やさしく、羊の私を抱きしめた。その姿を島の人も見ていた。

セーターを着ている人もいたけれど、私は何故かすぐに眠ってしまったようだった。

そうして、


「糸ちゃん! 糸ちゃん! 」

大きめのミミミの声がした。

「え? なに? 」眠かったので、ちょっと怒った様に言ってしまった。私はもちろん自分の部屋に戻っていた。

「糸ちゃん、あついよ! 」

「あつい? 仕方ないよ、日本の夏は暑いよ、それにミミミはフエルトで綿が入っているから・・・」

「違うよ、糸ちゃんが熱いんだ、熱がある、かなり高いかもしれない!」

「え? 私が? 」私は体を起こしたら、確かにフラっとしてしまった。体も重くて明らかに熱い。

「糸ちゃん、旅のせいかもしれない。でも、とにかく早くお父さんとお母さんの部屋に行って! 」

「うん・・・」とベットから起きて歩き始めると

「糸ちゃん、大丈夫? フラフラしているよ」

ミミミはずっと心配そうだった。

「大丈夫・・・行ってくるね、ありがとうミミミ」

 

その後はお母さんとお父さんが体温計を持ってきたり、頭や体を冷やしてくれたりした。

ミミミはもちろんマスコットに戻っていたけれど、ちょっとだけ目が動いているように見えた。京子ちゃんの家でおばさんのクッキーを見たときを思い出したけれど、時間が経つにつれ、体がどんどんきつくなった。


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