一望
私の立っている所からでも、島がそれほど大きくないことがわかった。地面のほとんどは草に覆われていて、それが急に終わっているような感じ、つまり崖になっていたり、斜めの草地がちょっとだけあって、そこで羊が草を食べているようだった。一面の小麦畑のようなものは見えない。畑もあるみたいだけれど、そう広くも無かった。
小さな道が島の先に続いている。でもそこにはもう人の姿は無かった。みんな家に入ってしまったのだろう。石で作られた頑丈そうな家が間を置いて建っていて、その家々の煙突から、勢いよく煙が出ている。私はその1つに行ってみた。でも入り口の扉は閉まっているし、小さな窓にガラスは無くて、代わりに木の小さな扉がついている。
そのちょっと開いた所から見てみると、人の後ろ姿しか見えない。でも音からして、何かを食べているようだ。
「ああ、よかった、ゆっくり休めているみたい。でもここはたくさんお野菜とか小麦をとれるようなとこじゃみたいだけど・・・ミミミ」
「まあ、食料がどれだけあるかは島の人達はよくわかっていて、大勢だけど助けてあげられる量があったから、みんなで話し合ってそうしたんだよ、きっと。魚はとてもたくさん獲れるところみたいだからね。ごめんね糸ちゃん、フェアアイルセーターどこじゃなくなった」
「ああ、それを見に来たのに忘れるところだった。でもびっくりした、もっともっと大きな島で、森もあって花も一年中咲いている所だから、あんなきれいなセーターが出来たんだと思ったけど・・・」
「どうして木が生えていないかわかる? 糸ちゃん」
「どうして・・・どうして・・・えっと海沿いに防風林を作った話は聞いたことがあるの。作ったって事は人が自分達で植えたって事だよね。じゃあもし人が植えなければ・・・自然に木は生えないって事なの? そうか、もし鳥が運んだ木の実が落ちても、これだけ風が強いと転がって海に落ちちゃうもんね。それに、木が生えても、風で大きく育たないのかな」
「多分それが正解だと思うよ、何だか別の目的の旅になっちゃった。
ねえ・・・糸ちゃん次の旅はどうしようか・・・百年後ぐらいだったらフェアアイルセーターの元がキチンとできあがっていると思うんだけれど・・・」
「それよりも遭難した人達が気になるよ、ミミミ、元気になった姿が見たい」
「糸ちゃんならそう言うだろうと思ったよ」
「ねえ、この先にもちょっと行ってみたいな、そうすればフェア島の全てを見ることが出来るかもしれない」
「そうだね、そうしようか」
私達は道を急いだ。他の家でも、ほんのちょっとしか人の姿は見えず、
代わりに島の人達が、野菜を持って忙しそうにしているのが見えた。
「お! お前! こんなとこまで来たのか? 難破したのはスペインの船らしいな、お前の群れがいたところだろう?」
羊から話しかけられた
「え? なんで国までわかるの? 」
「人間達が言っていたじゃないか、それにお前も鳥たちからスペインの話しを聞いただろう? 」
将来、動物と話せる機械ができあがったら、人間は驚くだけではすまないだろうと私は思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます