藍への愛最終話 楽しい嘘
「え! バレーボール? 京子ちゃんの雰囲気じゃないけど」
「すごく楽しいの! 昨日ね、初めて試合に出たんだけど、スパイクも決められて、監督からも誉められたの。うれしかった!
これからもずっとバレーを続けて行きたいわ」
私がシュートを決めて勝った試合の様に京子ちゃんは話した。
京子ちゃんは、私が「バレーのことは初めて聞いた」と思ってくれたようで、ウソだったけれど、おばさんとの約束は果たせた。
朝の登校時間は楽しく過ぎて、家に帰ったら、ミミミは目を覚ましているかなと私が学校で考えていると、急に目の前に礼がやって来た。そして私をちょっと睨み付ける様に見るので、昨日、礼のお姉ちゃんの車になんの挨拶もしなかったことを言われるのかと思いきや
「お前・・・糸じゃないだろう」
「え! 」その言葉を聞いたとたん、猟犬コウのこと、山のことを一気に思い出し、私はドキドキし始めた。
「やっぱり、お前糸じゃない、本物の糸だったらすぐに向かってきてたのに。お前・・・中身が浪浦と入れ替わっているだろう? あいつがバレーボールなんて変だし」
見ると教室の隅の方で、他の子達と楽しく話しながら、京子ちゃんがレシーブの動作をしている。
「なんだ・・・そのことか・・・」
と礼の手前ポロリと言ってしまった。
「やっぱりそうだろう! 」
まあ暇なので私をからかっているのだろうが、この先、感の良い礼にはちょっと釘を刺しておく必要がある。
だから私は礼に小声で
「変なこと言うと・・・礼の小さい頃のすっごくきれいなハート型の蒙古斑のこと、みんなに話すわよ・・・」
「う!!! 」すぐさま礼は私の前から退散した。
奥の手は取っておくものだとしみじみ私は思った。
そして家に帰って部屋に入る前に、私はニコニコとした。
だってドアの前にいるだけで、お菓子の臭いがしたから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます