1期生との初対面③
キャラクター紹介更新したのでよければ見てみてください。
「改めまして、はじめまして〜。
「えっと、
「
「は、初めまして! 今日からここでお世話になる高谷陽南です! よろしくお願いします!」
「「「よろしく〜」」」
あの後先輩方は事務所内のスタジオから帰ってきて、改めて挨拶をしてくれた。
やたらガンガン話を回していた人が洲古すこる先輩改め中谷美玲先輩。
ツッコミに回っていた人が戸々野つまり先輩改め戸村有紗先輩。
大人しくて可愛かった人が枡田にぱ先輩改め平野葉月先輩。
こんなこと言ったら失礼にあたるけれど、思っていたよりも全然まともな人たちだった。
初対面があれだったのだ。正直、実際がどんな人たちなのか想像もできなかった。
てもこうしてお話してみればちゃんとされているし(大人だから当たり前だけれど)、皆さんお綺麗だった。
そりゃ、モデルとか芸能人の綺麗さとはまた違うけれど、十分にお綺麗なお姉様方だ。
初対面で何を話せばいいのかわからないでいると、中谷先輩が話題を振ってくれた。
「高谷さんはどんな姿になるんだろうね!」
「あ、たしかに……まだ分かってないんですよね。どなたが描いてくれるのかも」
「私知ってるよ〜、高谷さんのVとしての体はあおしおうしが仕立ててくれるんだって! ね、ぐんちゃん!」
「そうだよ。高谷さんには後で話そうと思ってた」
「あ、そうなんですね! その人のことはちょっと知らないんですけど……イラストレーターさんですか?」
「え〜知らないの〜?」
中谷先輩がわざとらしく手で口を抑える。
からかわれているのだろうけれど、嫌な感じはしなかった。
むしろ、私との距離を縮めにきてくれているようで優しい人なんだなという印象だった。
それにしても、あおしおうしさん……聞いたことがない。
その名前は先輩方にとっては常識なのかもしれないけれど、私にとってはVtuberという業界自体未知の世界だから誰が誰なのかとか全然分からない。
「もったいぶってないで教えてあげな」
「言われなくても教えるってー。えっとね、あおしおうしはイラストレーターなんだよ〜。4期生が初めてのあおプロでのお仕事で、高谷さんだけじゃなくて井手駒こますも仕立てるみたいだから今頃馬車馬のように働いてるんじゃないかなあ。ぐんちゃんも容赦ないよね」
「ちょっと待ってよ。こますの依頼は去年からしてますー。そんな私が鬼みたいな言い方しないでくれる? でもまあ、高谷さんの分まで引き受けてくれるとは思わなかったけどね」
本来、私はデビューする予定ではなかった。代理でデビューするのも急遽決まった感があったし、事務所もバタバタしていたのだろう。
あと、青崎社長の口ぶりからするにやっぱり私のデビューはほぼ決まっていたのかもしれない。
それか、奈央の代わりにデビューさせる人を探していて、先行してVtuberモデルの制作依頼を行っていたとか。
そう考えると、複雑な気持ちになってしまう。
「その方にもぜひご挨拶したいです」
「あ〜、でもあいつ人見知りだからなあ。あいつを引っ張ってくるの大変だぞ〜」
「中谷先輩はあおしおうしさんと仲が良いんですか?」
純粋に気になって質問してみた。
「仲は良いかなあ。でも最近、関係が冷めてきてるのを感じてる……」
「いつあったまってたんだよ」
「有紗覚えてないの? 私のイラストをあおしおうしが添削する配信してたじゃん」
「ああ、あったね」
「そこでさ、あいつが「すこちは可愛いと思うよ」って言ったんよ。そこから私の中ですこあお……あるな! ってなったし、関係もあったまったと思うんよね。あの配信を経て」
「あれって美玲があおちゃんに無理やり言わせてなかった?」
「マジで言わせてないから。有紗、マジですこつまが好きすぎて、事実を自分に都合のいいように捻じ曲げちゃってるんよ」
「あとでアーカイブ確認するからな」
「いいよ? 別に。ていうか最早すこつま好きイジりに反応しなくなったな。私としてはもうちょっと擦りたいんだけど」
「もう十分擦られたわ! 切り抜きで50万回な!」
中谷先輩が爆笑した。
何が何やら分からないけれど、何かがあったのだろう。
いつまでになるかは分からないけれど、ここで働くうちにそういった過去の話も知れていけたらいいな。
「挨拶も済んだことですし、高谷さんの今後の予定についてお話を……」
「あ、はい! よろしくお願いします!」
「なんかうちらもう用済みじゃね?」
「ぽいな」
「収録終わりなのに来てくれてありがとうね。もう用ないから帰っていいよ!」
「ひどっ!」
「あ、そうだ! あおしおうしに挨拶したいって言ってたよって言っとこうか?」
「あ、ぜひ! ありがとうございます!」
「いいのいいの〜。ていうか連絡するの自体いつぶりなんだよって感じなんだけど」
中谷先輩はやっぱり、いい加減に見えてちゃんと考えてくれている。
まだ来たばかりだけれど、ここでなら上手くやっていけるかもしれない。
たとえ代理でも、最初からほぼ採用が決まっていたとしても、いいじゃないか。
私の任務は、奈央が復調するまでの間、奈央の居場所を作っておくこと。
最初は安請け合いしすぎたかなと思ったけれど、ただ仕事に行って帰ってご飯食べてお風呂に入って寝るだけだった虚無の日々が少しだけ変わりそうな、そんな期待もある。
きっといいようになる。私はそう心の中で唱えて、柚原さんと会議室に向かうのだった。
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