第12話
*
「それじゃごちそうさま」
「こちらこそ、いろいろありがとうございました。帰りも車で送りますので」
「ありがとう、じゃあまた学校で」
俺は食事を終え、そのまま車で家まで送って貰った。
一時はどうなるかと思ったが、まぁ結果オーライになって良かった。 今回の偽彼氏役は案外すんなり終わったなぁ。
まぁもうこんな役をする機会なんてないだろうし。
「はぁ……」
なんか気疲れしたなぁ、今日は家でゆっくり休もう。
そう思いながら俺は家の鍵を開けて中に入る。
案の定中には誰も居ない。
母さんも誰かと食事に行くと言っていたし、まだ帰って居ないのだろう。
俺は冷蔵庫からお茶を出してコップに注いで座って飲む。
変に緊張していたせいか、今更になって疲れが出てきた。
「さて、風呂入って寝るかなぁ」
なんてことを一人で言っていると玄関のドアがカチャリと開いた。
「ただいまー」
「あ、母さんお帰り。飯うまかった?」
「あぁ……うん。おいしかったわ……」
なんだろう?
帰ってきた母の様子がおかしい。
しかも……。
「その花どうしたの?」
「え? あ、あぁこれは……」
なぜか母さんは大きなバラの花束を持っていた。
母さんは別に今日が誕生日とかではない。
一体なぜそんなものを持っているのだろうか?
そんなことを俺が考えていると、母さんは真面目な表情で俺に話をし始めた。
「あのね、大事な話があるの」
「え?」
「お母さんね、再婚を考えてる人がいるの?」
「え!?」
俺は突然の母親の発言に驚き声を上げてしまった。
なんでも相手は同年代の男性で会社を経営しているらしい。
出会ったのは三年前で仕事の関係で知り合い、何度か食事に行くうちに仲良くなり、今日結婚を前提にした交際をしたいと告白されバラの花束を渡されたらしい。
「それで、私はその話を受けようと思ってるんだけど……私には貴方も居るから、貴方の意見を聞いてから返事をしようと思って」
「まぁ、母さんが良いと思ってる人なら俺は良いと思うよ」
「ありがとう。あの人、私が子持ちってことも知っててね、貴方にも会いたいって言ってるのよ」
「まぁ、再婚相手の子供は気になるよな。俺は良いよ、俺もその人に会ってみたいし」
無いとは思うけど、結婚詐欺師っぽいやつじゃないとも限らないし、どんな人かも見てみたい。
「じゃぁ、早速で悪いんだけど月曜日の放課後に時間を作ってくれる?」
「あぁ、わかったよ」
こうして俺は母親の再婚相手になるかもしれない相手に会うことになった。
ここ数日でいろいろなことが起こりすぎていると自分でも思っている。
そして、月曜日。
この日から俺の人生は平凡なものから騒がしく慌ただしいものになっていった。
*
「でか……」
「そうね」
「え? まじでここで会うの?」
「そうよ」
「いやいや、経営者って聞いてたけど……マジの金持ちなの?」
母さんにつれて来られたのは地域でも有名な高級レストラン。
しかも今日のために貸し切りにしたという話まで聞いた。
経営者とは聞いたけど、まさか再婚相手のためにここまでするなんて……。
確かに母さんは年齢の割にはかなり若く見られるし、一般的に美人の部類に入るだろう。
それでももう高校生の子供が居る女性にここまでのことをするだろうか?
それともよほど母さんに惚れ込んでいるのか?
「いらっしゃいませ。榎本様ですね、お待ちしておりました」
中に入るとウェイターさんが直ぐに俺たちのことを席に案内してくれた。
フロアにお客さんは一人もおらず、完全な貸し切り状態。
なのに、フロアに置かれたピアノを女性が演奏し良い感じのBGMになっている。
「か、母さん。一体どんな人に気に入られたなんだよ」
「まぁ、こういう人なのよ。たまにあったでしょ? 高いお菓子とかを家に持って帰ってくる時」
「それもその人からのプレゼントだったのか……」
もしかして母さん逆玉に乗った?
まぁ、経済力はかなりあるようだけど、問題は性格だよな。
よし、どんな人なのか俺がしっかり見極めてやる。
なんてことを俺が考えて居ると、少ししてその男性がやってきた。
「実里(みのり)さん。お待たせしました、少々仕事の電話が長くなってしまって」
「大丈夫よ。慶史郎、挨拶しなさい」
母さんにそう言われ、俺は顔を上げて男性に挨拶しようと顔を上げ、そのまま固まった。
固まったのは俺だけではなく、その男性も一緒だった。
そんな俺たちのい気がつかず、母さんは男性の紹介をする。
「慶史郎、この人が木城さんよ」
「あ……え? えっと……」
「む、息子さ……ん?」
そう、やってきたのはつい先日に衝撃的な初対面を終えたばかりの木城さんの父親だったのだ。
「あら? 二人ともどうしたの?」
「か、母さんまさか再婚を考えてる経営者って……」
「木城さんよ?」
「お、俺の父さんになるかもしれない?」
「もう、気が早いわよ」
母さんは何もしならないで笑いながらそう言っていた。
「里見さん! む、息子さんというのは!?」
「この子よ。名前は慶史郎って言うのよ」
「む、息子!?」
どうやら木城さんの父親も動揺を隠せないらしい。
俺も当然混乱していた。
「お、お父さん?」
「む、息子?」
そう俺と木城さんの父親はお互いに言い合った。
そんな俺たちを母さんは不思議そうに見つめていた。
そして、俺は自分で処理できる情報量をのキャパを超えてしまい、驚きのあまり叫んだ。
「お父さんんんんんんっ!?」
「む、息子ぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」
驚きで叫び声をあげたのは俺だけではなかった。
fake boyfriend 私の彼氏になって Joker @gnt0014
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