第4話
*
「ねぇねぇ、木城さんって前はどこの高校居たの?」
「九城ケ崎女子高校に在籍しておりました」
「九城ケ崎!? そこってかなりのお嬢様高じゃない? なんでこんな普通の学校に来たの?」
「私が希望したんです。一般の学校生活を送ってみたいと」
教室に戻ると隣の席にはクラスメイトが集まっていた。
木城は質問攻めにあっていて少し大変そうだが、優雅に微笑みながら全員の話しに耳を傾けている。
可愛くて性格も良いなんて、完璧だな。
誰かさんとは大違いだ。
なんて事を考えているとクラスのお調子者の床山が俺の頭に手を置いて質問をしてきた。
「はいはーい、じゃぁなんで榎本と知り合いだったの? 昨日なんか色々あったみたいだけど」
「あ、それ私も気になる!」
「何だよ榎本、お前あんな可愛い彼女が居るのに二股かよ」
「たく、仕方ない奴だなぁ~。そのうち愛想つかされるぞ」
床山の奴、余計な事を言いやがって……。
まぁでもいい機会だな。
きっと霞夜は自分から別れたなんて言いずらいだろうし、ここで全部説明しておくか。
「あぁ……霞夜とは別れたよ」
「え?」
「は?」
「「「「えぇぇぇぇぇ!?」」」」
俺の言葉に教室中が驚き叫びを上げた。
その直後、最初は木城さんに集まっていたクラスメイト達が俺の机に集まって来た。
「え? なんでなんで!」
「あんな可愛い彼女なんてもう一生出来ないぞ!」
「喧嘩したのか? ちゃんと全裸で土下座はしたのか?」
「なんで全裸なんだよ!」
予想した通り、皆かなり驚いていた。
男子の中には「あいつでいけたんだから、俺でもワンチャンある?」なんて話しが早速持ち上がっている。
逆に女子は「まぁそうだよねぇ」なんて俺の顔を見て笑みを浮かべている奴が居る。
余計なお世話だ。
俺だってあいつとつり合わないことくらい知ってるっての。
「まぁ、そういうことだから放っておいてくれ」
「なんかごめんな。知らないとはいえ、変なこと言わせて……」
「今度アイスでも奢るわ」
「急に優しくなるなよ」
「じゃあ、木城さんとはなんで知り合ったんだ?」
「あぁ、それはだな……」
俺は昨日木城との間にあったことをクラスメイトに話した。
「なんだそんなことか」
「俺はてっきり無謀にもナンパでもしたのかと思ったんだが」
「いや、榎本じゃ無理だろ?」
「いい加減うるせぇぞ床山」
そんな話をしているうちにチャイムがなり、先生が教室に入って来た。
そのタイミングで皆は席に戻り、授業の準備を始める。
俺も同じく準備をしようとしていると、隣の木城さんが話しかけてきた。
「あ、あの……お付き合いされていたと別れたと聞きましたけど、それってもしかして昨日の件が問題ではありませんぁ?」
「あぁ、木城さんの事とは全然別件だよ。てか木城さんと知り合った時にはもう別れてたし」
「そうなんですか? もし私のせいであれば一緒に謝罪にと思ったんですけど……」
「いや、絶対そんな必要ないから。大丈夫だよ」
「それなら良いのですが……」
木城さんは会話の節々に育ちの良さと気品を感じる。
お嬢様学校に言ってたって話しだし、恐らくだがどっか良いところの娘さんなのだろう。
少し世間知らずなところもあるようで、まさにお嬢様って感じだった。
「え? ファーストフード店行ったことないの?」
「はい。学校までは送迎がありましたので、学校帰りにお店に寄るなんてことは全くありませんし、そもそもそう言ったジャンクフードは両親にとめられていましたので」
「ふーん、流石お嬢様って感じだな」
「そんな、私は全然そんなの存在ではありませんわ。ただお父様は別荘を2個とプライべートジェットを所有している木崎グループの社長ではありますが……」
「十分お嬢様だろ」
後から発覚したのだが、なんと木崎は有名な木城グループの社長令嬢だったのだ。
まぁ、言葉遣いとか言動とか凄くそれっぽい雰囲気はあったけど、まさか本当にお嬢様だったんて夢に思わなかった。
「そうでしょうか? 前の学校では普通だったのですが……」
「まぁ、だろうな……」
ホームルームの後、俺と木城は席が近いからという理由で良く話をするようになった。
気が付くと飯の時間まで一緒にするようになり、どうやら俺は木城に完全に懐かれてしまったらしい。
「榎本さん、今度のお休みはお暇ですか? 避ければ昨日のお礼をさせていただきたいんですけど」
「え? いや、そういうのは良いよ。別に見返りが欲しくてしたわけじゃないし」
「でも、それでは私の気持ちが収まりません」
「でもなぁ……あ、じゃぁ今度一緒に飯付き合ってくれよ。それでチャラで良いよ」
「え? そんな事で良いんですか? そ、それでは早速店を準備しますので避ければ明日にでも一緒に食事をしませんか?」
「え!? い、一緒に食事?」
本当は一緒にファーストフード店に行けばそれで良いと思っていたのだが、まさか店を準備するなんて言い出してくるとは思わなかった。
「榎本さんは好き嫌いありますか? フグ料理なんかがよろしいかと思うんですが、どうですか?」
「ふ、ふぐっ!?」
とんでもないことをさらりと言われてしまった。
いや、フグって……この辺りでフグを出す店って、あの名店しかないんだけど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます