CUT 3 イドラ改

get lady 第2話 

世界系(トランスワールド)


w1(A=B)、w2(B≠A)w2=異世界

Begin

Trance World

# define

 サクリファイスは阿片の犠牲者。リアルの足りない阿片のせいで女性ジャンキーは破滅していく。リアルの不足を埋めるためにしばしばドロップが用いられ、阿片からドロップへとジャンキーの中心をずらせばサクリファイスはリアルを失ってゼーレンにフィックスされる。誠に阿片患者のサクリファイスは悲惨な運命を辿る。


# サクリファイス

 真理が女性ジャンキー候補なのは知れた事だが、ドロップを餌にジャンキーの仲間入りを果たそうという動きが有るのを最近噂聞いた。大体何時もサクリファイス=犠牲者が出るのはリアル不足が原因で、リアルが無くなったとみると見境なくリアル捻出に狂奔するのが阿片業界界隈の事情だった。

 真理は今日も何事もなかのように学校へ出席していて、放課後まで不審な動きは何もなかった。一寸昼休みに、ドロップについて鎌を掛けて見た時の、反応の速度の遅延が若干不気味だった。仮に真理がドロップ常食の犠牲者だとしても、僕にリアル供出の解消は無いし、かと言ってゼーレンにた辿り着ける情報網もない。即ち持っていかれたら終わりだった。阿片中毒の大人には既に良心などと言うものは無いらしい。

 真理が鞄に教科書を詰め込んでいる。窓際の席の真理は窓からの太陽光で後光がさしていて、其れだけ見ていると神々しさえ感じられた。

 「今日も行くの?」

 「付き合いだから」

 「危ない、って言ってなかったっけ」

 「そんなに心配ないから」

 阿片窟へ行くのに、心配は無い、は無いと思うが――

 「エスコートいたしましょうか」

 と尋ねると、

 「男子禁制、だから今日行くところ」

――と返されて、追跡不能だった。それでも男子禁制となればゼーレンと言う事は無さそうで、若干安心した。男子禁制と言うの女子寮とかそういう事だろうか。

 「わかった。気を付けて」

 消極的にだが、潔く黙って見送ることにした。


# ジャンキー&ドロップ

 と言って、潔く真理が犠牲者になるのを我慢できるわけもなく、素人臭いが、尾行することにした。凡そ15mほど離れて、徒歩の真理の後をついていった。服装を予め用意した私服のナイロンジャケットに着替え、下は綿パンを履く事にした。サングラスを掛ける代わりにキャップを目深にかぶった。

 移動する真理の経路は、この前行ったジャンキーの阿片窟への経路其のままだった。随伴に友達は無し。独りで来てしまっていた。声を掛けて中止させようとも思ったが、何となく怖くて踏み込めなかった。所持金は三千円弱だった。

 あと10mでこの前の阿片窟に辿り着く。やはり思い切って声を掛けよう、そう思って口を開くと。

 「坊ちゃん、ストーカーは駄目だよ」

人相の悪い、体躯の凄い感じの、肉食の男性に捕まってしまった。


# ロスト

 人相の悪い男に捕まっているうちに真理は阿片窟の扉を開けて入ってい行ってしまった。男の制止を振り切って阿片窟に跳び込もうかとも思ったが、遅い気がした。仕方なく男の相手をすることにした。

「おじさん、あそこの関係者?」

「いや、あそこに出入りする人の関係者」

この親父にまとわりついてれば次のフェイズで真理に会えそうな気がした。そうなってからでは全部手遅れ、ではあるが。

 やはり正門突破、だろうか。

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