第24話 馬車で2人
1558年11月19日
メアリー女王が没して2日後には
ロンドンの貴族ほぼ全員が
我先にエリザベスとの面会を求めた。
新女王エリザベスは
“メアリー前女王の謀叛の首謀者”
エリザベスは内乱を覚悟して兵を
集めていたが
有能なセシルの手際良い策は、
ロンドン宮廷の貴族どもの度肝を抜き、
反旗どころかエリザベスを断罪した事を水に流してもらおうと
ロンドンより30km離れた
ハットフィールドまで殺到したのだ。
エリザベスは次の一手を打つ。
敢えて誰とも会わず、
次の日に急遽一同集める事にした。
通達役は寵臣セシル。
・・明日、ブロケットホールに集合せよ・・
ブロケットホール宮殿は
ロンドン宮廷との戦いに備えた
エリザベスの軍時拠点で
ハットフィールド宮殿より北3kmにある。
議員達は文句も言わず、
ぞろぞろと1時間程歩き
到着しても屈強な兵達による検問が待ち、
ようやく宮殿内に入っても
兵はあちこちに配備され移動の自由はない。
宮殿の周囲も兵で埋め尽くされていた。
物々しい雰囲気に議員達は、
ここまで来た事を後悔する。
・・拘束されるのか?・・
・・いや、来なきゃ叛逆者と疑われる・・
議員達は肝を冷やしながら夜を過ごした。
次の日の11月20日 早朝
ブロケットホール宮殿の大広間。
ロンドンからの議員に加えて
エリザベスの寵臣達や各国大使と
男どもばかり400名が大広間にひしめく中
25歳のエリザベス女王は登壇し、
男どもを見下ろした。
張り詰めた緊張感。
エリザベスは透き通る声で沈黙を破る。
「既にロンドンで朕の宣誓書をしかと聞いたであろう。今日は朕の考えを披露したい。
サー・ウィリアム・セシル!前に出よ!」
宣誓書を作成した切れ者セシルが前に出た。
「セシルよ!
そなたを枢密委員及び国務長官に任命する。」
セシルは無言で頭を下げた。
エリザベスは続ける。
「粉骨砕身我が国に尽くし、
決して、贈賄汚職で身を滅ぼさぬ事。
国の為とあらば、朕の意志に反しても
貴職の意見を述べる事。
内密の情報は他言せず、朕だけに知らせる事。
良いか!」
セシルは、跪いて新女王に敬意を表した。
「皆の者、今後はセシルが朕の助言者だ。
その上で、皆にお願いがある。
朕は、姉の死を深く悼んでおる上に、
責務の重圧に押し潰されそうである。
しかし、朕は神の大いなる計画の代理人として責務を果たそうと決意した。
ここにいる皆は、チューダー家の始祖王ヘンリー7世の頃からの由緒ある家柄、
我がチューダー王家を支えて来た者達である。
朕が皆に望むのは
“忠誠心”
ただ一つである。が、しかし
“多人数では混乱をきたす”
故に・・」
“多人数では混乱をきたす”
このフレーズに、会場はため息を吐く。
エリザベスは続けた
「・・故に、枢密院メンバーを縮小する。
もし任命されなくとも、
それは能力の欠如ではない。
繰り返すが、混乱を避ける為であり、任命されずとも朕に忠誠を尽くすよう、国家を愛する良き国民となるようお願いする。」
言い終わるとエリザベスは退出しすると
執務室に移り、
大広間で発表しなかったが、
枢密委員の新メンバーを招集した。
貴族達が服従を決めている今のうちに
エリザベスは次の手を打つのだ。
新枢密委員は17名。
メアリー女王時代からの残留組は7名は、
選出された事に驚き、
恐る恐る執務室に入室する。
既にエリザベス女王子飼いの臣下10名は
着席していた。
・・
枢密委員は王の諮問機関で行政の中枢である。
ヘンリー8世の時代の名から
メアリー女王は44名まで増やしたが、
今回19名に減らす。
エリザベス派10名
カトリック派7名(メアリー時代からの残留組)
他2名
7名も残留させたのは
彼らはいずれも長老で
カトリック派への抑えを期待した。
それ以外に注目は2点だ
①聖職者は除外。
カトリックはもちろん、
プロテスタントも例外では無い。
②エリザベス独断の人選。
セシルにも相談せず、短期間で決定した。
さて、枢密委員メンバーに
サー・ニコラス・スロックモートンの名は無い。
ポール枢機卿を処分したニコラスは
フランス大使に任命し、英国から出国。
隠蔽を図った。
・・
ここまで計算し尽くされた人事であったが
一人、不可解な人物が起用される。
ロバート・ダドリー。
ギリシャ彫刻のような肉体に甘いマスク。
エリザベス女王より1つ年上の26歳。
第7話でジェン・グレイ女王擁立に失敗し、
メアリー女王に処刑された
ジョン・ダドリー護国卿の息子である。
父の処刑に連座し投獄されたロンドン塔で、
エリザベスとの出会った。
ロバートは人気イケメン騎手。
政治家ではない。
そんなロバートを
エリザベスは主馬守に任命する。
これは、
アイドルをお抱え運転手としたようなもの・・
・・
新生枢密委員17名との非公式な会議終了後、
エリザベスは、ロバートを呼ぶ
二人の背後に、
スペイン大使フェリア伯爵が居た。
フェリアはまだ、
スペイン王フェリペ2世とエリザベス女王の結婚を諦めていない。
・・新女王の中指に“Black Enamel Ring”。
間違いない!フェリペ陛下がメアリー女王陛下に贈答した婚約指輪だ・・
エリザベスは、フェリアに気付かず
暗い夜道、馬車に2人っきり。
ハットフィールド宮殿に消えていく。
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