第74話 光輪浮遊

 ……石の針を受けた傷口からアンリの身体が徐々に石化していく。

 オクタヴィアと石の魔女アヴローラが激しく打ち合う……魔女の石剣が赤く熱を帯びる。


「!」


 アヴローラの鋭い突きをオクタヴィアが躱す。魔女の剣先がオクタヴィアの黒髪を焦がし、焼け焦げた臭いがひろがっていく。

 オクタヴィアにアガサと呼ばれた銀髪のオークの女がアンリの傷口に手を当て止血をする。


「私の魔力だと簡易的ですが止血は出来ます……この石化の解呪は……すみません」


「すまない……ありがとう」


 アンリがゆっくりと立ち上がる。アンリは石化を食い止めようと精神を集中させ体内の魔力をコントロールする。

 ……魔女アヴローラのスカートの中に瘴気が取り込まれていく。魔力が魔女の身体を駆け巡る。


「フフフ……みなぎるわぁ……」


 魔女が恍惚の表情を浮かべる。へそ周りの筋肉が脈動する。吸収したディアスとベネラの肉体が魔女の身体に馴染んでいくにつれ、魔女の力が強化されていく。


「身体が熱い……胎内から魔力が湧いてくる……」


「はあっ!」


 オクタヴィアの一撃がアヴローラの右腕をとらえる。しかし、魔女は白霊布の長手袋を石のように硬化させ攻撃を防いだ。


「硬いな……」


 硬化した白霊布の長手袋にひびがはいった。


「岩津波……」


 魔女の足元から触れるものを石化させる波が生じ周囲に広がっていく。

 オクタヴィアは攻撃を回避するため後退する。その隙に硬化させた白霊布の長手袋のひびに魔力を通し修復する。


 ……アヴローラは身体を浮遊させる。取り込んだ瘴気から生み出した魔力で肉体が強化されていく。胸部が脈動し膨らみ、白霊布で覆われた美しく整った胸元が露になった。身長もオクタヴィアの長身を上回る程に伸びていく。さらに魔力で両手足に銀色に輝く浮遊するリングを形成し、上昇していく。


「いきますよ……」


 魔女アヴローラは空中に無数の石剣を形成する。魔女が右手をあげると、地面から石壁がせり上がりアンリ達の周囲を囲んでいく。

 アガサは魔力を込めたナイフをアヴローラへ投げつけるが構成された障壁によって阻まれる。


「……しのげますか?」


 魔女が右腕を振り下ろすと無数の石剣がアンリ達に降り注ぐ。

 アンリとアガサは形成した氷の壁で身を隠し攻撃をしのぐ。オクタヴィアはハルバードで降り注ぐ無数の剣を受け流していく。


「やりますね、まだまだいきますよ……流れ落ち塵焦がす星の涙、スタークリーク」


 魔女の周囲に浮かんだ無数の光弾がアンリとアガサに襲いかかり、身を隠す氷壁を破壊する。

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