第48話 ヴィルジニー
謎の人影は地衣類の柱の陰に身を隠しながら、ルーネに向け矢を放つ。
ルーネは氷弾を形成し謎の人影に向け蹴り飛ばす。氷弾が炸裂し、地衣類の柱の周囲に氷の刃が飛び散る。ルーネは勢い良く駆け出し、地衣類の柱をポールアックスで粉砕する。
「逃げられた?」
立ち並ぶ地衣類の柱をぬいながら逃げる人影を彼女は追いかける。
「待て!」
ルーネは逃げる人影の足元を狙って氷弾を放つ……脚部を凍らされた謎の人影が転倒する。ルーネは馬乗りになると謎の人影の正体を隠していた外套を剥ぎ取り、首元に魔力を込めたダート突きつける。
「女?」
「ちょっ待って!降伏する!殺さないで!」
ダートを突き付けられたゴブリンの女は怯えた表情で懇願した。
「どうして、わたしを狙ったの?貴女はどういう目的でここにいるのかしら?」
ルーネは暗闇の中で瞳を青く輝かせながらゴブリンの女に問いかけた。
「あっ、あたしは……こっ、ここに貴重な魔石があるって噂を聞いて……そしたらゾンビ化した奴らがいて……そっ、それに妖しい淵術士がうろついてるって噂も聞いたから……」
「それでわたしを狙ったの?わたしはゴブリン達を殺して死体を動かしていた犯人じゃないわよ……貴女名前は?」
「ヴィルジニー……」
ゴブリンの女が名前を告げたその時……ルーネは周囲に異様な気配を感じ振り返ると、黒いドレスの女が黒い布に包まれた棒状のものを携え立っていた。
「ねぇ貴女……わたくしの仲間にならない?」
暗く汚れた坑道に似つかわしくない美しい黒いドレスを纏った女の声が暗闇に響く。
「誰?何者?」
ルーネが問いかけると、黒いドレスの女は微かに微笑んだ。
「黒の衝撃」
黒いドレスの女の放った淵術の奔流がルーネの身体を吹き飛ばす……黒いドレスの女はゴブリンの女ヴィルジニーに顔を近づける。
「わたくしは緑の魔女エシャール」
「この惨状はアンタがやったの?」
「フフフ……そうよ」
魔女エシャールは微笑みながら囁いた。
「ねえ……ヴィルジニーさん貴女、魔石目当てにここに来たんじゃないでしょ?」
「……」
ゴブリンの女ヴィルジニーは唾を飲み込む。
「本当はこれに惹かれて来たんじゃないの……」
魔女エシャールが携えた黒い布の包みを解く……魔女の手に握られていたのは一本の黒い槍だった。
「ねえ……どう?身体が疼くでしょう?」
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